yomoyomoの読書記録

2011年05月23日

Gever Tully、Julie Spiegler『子どもが体験するべき50の危険なこと』(オライリー・ジャパン) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 オライリー・ジャパンの田村さんから献本いただいた。本書よりも前にも他に本をいただいているのだが、先に一気読みしたので本書の読書記録から。

 この本のタイトルを知ったときから、どっかで聞いた感じだと思っていたのだが、「子どもがすべき5つの危険なこと」という TED 講演が本書の端緒だったのね。

 その講演でも触れられているが、子供に対する安全規制が年々厳しくなっているのは(日本だけでなく)アメリカなどでも同じである。それなのに何故子供に危険なことをするよう勧めるのか? 本書ははじめにその理由を説いているが、これは書名から受ける印象とは反対に、安全を考えるための本であるというのが結論である。本書は「Make: Japan Books」の一冊だが、危険から逃げるのではなくそこに踏み込む楽しみを享受しようという点において、底流する思想は『Make: Technology on Your Time』と通じている。

 言うまでもないが、本書はただ子供にムチャをやらせようという本ではない。一つ一つの項目を見ていくと「釘をうとう」とか穏当なものも結構あって、そうした意味での刺激を求めると肩透かしかもしれないが、いずれの項目もその教育的効果が考えられている(ポリ袋爆弾から質量保存の法則、紙コップでお湯をわかして転移エンタルピーを学べるのだ)。

 ただそうは言っても、本書の内容に自分の子供(今のワタシにはいないが)にやらせるのに躊躇するであろう行為を含むのも確かである。日本語版において、危険性や法律上の問題から差し替えられた項目もあり(個人的にはその「鉄道の線路で1セント玉をつぶす」というのを読んでみたかったりする)、それ以外にも配慮はなされている。それ以上は、本書の読者側の勇気が問われるのではないか。先日の電子書籍の DRM フリー化という勇気ある決定に対してわれわれ読者側がその信頼にこたえなければならないというのと似た構造が本書にも言える、と書くと大げさだろうか。


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