2010年05月06日
速水健朗、円堂都司昭、栗原裕一郎、大山くまお、成松哲『バンド臨終図巻』(河出書房新社)
刊行を知ったときから楽しみにしていた本だが、期待通りの充実した内容だった。
『バンド臨終図巻』と銘打たれた音楽集団の終焉にフォーカスした本であるが、扱う対象は(ロック)バンドに限定されず、アイドルグループ(ユニット)なども含め洋邦ともに広く扱っており、しまいにはソロミュージシャンであるプリンスまで項目になっていて笑ってしまった。また正確には解散していないバンドもいくつも取り上げられており、ワタシのロック体験初期に重要な役割を果たした HOUND DOG が、ロック史における重要度からすれば異例の3ページ割かれて取り上げられているのは(まぁ、これは単に公開情報が多いからだろうが)フクザツな気持ちになった(笑)
このように本書における選択基準は、上にも書いた「ロック史における重要度」によっておらず、またジャンル分けなどでなく単純にその集団の結成年に従い並べられた構成が奏功している。読み出すとなかなか途中で止まらない面白さがあった。ただそうして最近のバンドが対象になるにつれ、読んでて重苦しいものも感じ、正直本としての最終的な読後感はあまりよくなかった。「はじめに」で書かれるように、解散には「それぞれの不幸の形」があるんだなぁ……
個人的にはフリッパーズ・ギターについて4ページを割いた大山くまおさんの正に渾身というべき文章、チェッカーズについての切れ味の良い終わり方をする速水健朗さんの文章が印象的だった。ただ、スパイナル・タップについて、映画の話を一切せずにその設定とその後をそのまま続けて書いていて、速水さんもシャレがきついなと思った。ポリスについて近年の再結成の話が一行で済まされてるのは納得いかなかったが、これは個人的な趣味か。
あともうひとつ、BOφWY については氷室京介と布袋寅泰の言葉を引くだけに留まっているが、高橋まことがそのあたりの事情について自著にあっさり書いているという話を吉田豪のポッドキャストで聞いた覚えがある。高橋まことの証言に触れてないのは片手落ちではないだろうか。
ディケード毎に区切られた章の間に、著者のコラムがあり、これがまたどれも読ませるが、栗原裕一郎さんの「「解散」から「卒業」へ」が特に唸らされた。
これだけ幅広い題材を扱った本にしては誤植が少ないほうだと思うが、ワタシが気付いたのは以下のあたり。
(誤)モータウンの娘と結婚していたジャーメインが離脱し(p.62)
(正)モータウンの社長の娘と結婚していたジャーメインが離脱し
(誤)スティングがソロ活動を始めた95年時点で解散は確定的だったが(p.132)
(正)スティングがソロ活動を始めた85年時点で解散は確定的だったが
(誤)カーティスが死んだ日を歌った「ブルー・マンデー」(p.134)
(正)カーティスの死を知った月曜日を歌った「ブルー・マンデー」
(誤)活動休止後に発表されたラストシングル「プライマル」(p.252)
(正)活動休止後に発表されたラストシングル「プライマル。」