yomoyomoの読書記録

2008年09月11日

竹熊健太郎『篦棒な人々−戦後サブカルチャー偉人伝』(河出文庫) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 かつて『サルでも描けるまんが教室』の愛読者であった当方は現在も竹熊健太郎さんのファンであり、氏のブログたけくまメモで時折取り上げられる本書のことは気になっていたのだが、文庫版が出ていので購入した。

 本書は、書名に「篦棒(べらぼう)」というあまり良い意味でない言葉を使うことについてのお詫びから始まるが、興行師というより「騒動師」という言葉が似つかわしい康芳夫、戦後日本を代表する挿絵作家石原豪人、最晩年「おふくろさん」騒動で図らずも奇妙な形で注目を集めてしまった作詞家川内康範、そして日本のハプニング・アートの鼻祖「ダダカン」こと糸井貫二と本書に登場する人たちはいずれも紛れもなく「篦棒な人々」であった。

 どの人についてのインタビューも面白いのだけど、やはり冒頭を飾る康芳夫のべらぼう度がピカイチに思える。虚業家を自称し、自分がやってることを「退屈しのぎ」と一言で表現するこの人の仕事はすごい。

 ただ一方で、1998年に新たに取材されたインタビューはオウム真理教の事件を受けたもので、竹熊さんもかなり前のめりにオウムについて語っていて今読むとちょっと違和感があるし、康芳夫の言葉もいささか迎合的に読めてしまう。

 いずれにしても「退屈しのぎ」としてとても楽しめる本なのは間違いない。最後に文庫版あとがきから糸井貫二に関する記述を引用しておく。

また、五十年間生き別れとなっていた最初の奥さんとの間にできたご子息とは、本書の単行本出版の直後に再会を果たした。ご子息は現在京都にある繊維メーカーの重役となっている。たまたまご子息がメーカーを取材した番組に出演したところ、それを師が見ていた。師は居ても立ってもいられず京都に向かったという。立派な人物に成長した息子を目の前にして、師は全裸となり、「父を許してくれ!」とその場で土下座して詫びたそうだ。


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