yomoyomoの読書記録

2013年02月07日

Chim↑Pom『芸術実行犯』(朝日出版社) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 やはりマット・メイソン『海賊のジレンマ』を読み終えた後、ストリートアート方面についての知識がワタシは足らんなと思っていたところで本書の存在を知り、これが期待に応えてくれるのではないかと直感的に購入したのだが(そのあたりの個人的経緯についてはマガジン航に書いた)、その見立ては当たりだった。

 アーティスト集団 Chim↑Pom については、(多分多くの人と同様)広島の空をピカッとさせたり、岡本太郎の巨大壁画「明日の神話」に付け足しを行ったりといったのでニュースになったので主に知っていて、彼らの活動を網羅的に把握してるわけではなかった。

 要は特に彼らについて詳しくないわけだが、以前から上記の活動について特に彼らについてボロクソにこき下ろす人が自分の周り(ここではネット上の交友関係を指します)に結構いて、それがちょっと不思議だった。

 というのも、彼らの活動がそんな悪罵されるようなものとはワタシは思わないからだ。例えばワタシは伯父を原爆で亡くし、祖母と母親が被爆者である被爆二世であるが、広島の空をピカッとさせてそれがなんで不謹慎となるのかさっぱり分からない。対象が長崎の空であってもその感想は変わらない(それがアートとして優れているかは別問題)。

 これは偏見なのかもしれないが、Chim↑Pom を罵倒する人たちにも、(当然ながら本書でも取り上げられる)バンクシーを擁護する人たちは多いと思うのよ。アウトプットの質の上下はもちろんあるだろう。しかし、バンクシーを擁護して Chim↑Pom を不謹慎、悪趣味と罵られるのを見ると、彼らを持ち上げるつもりはさらさらないが、逃げ腰のまま「そこまでひどいかぁ?」と言いたくなるんですね。

 で本書だが、Chim↑Pom の成り立ち、その活動姿勢に始まり、論議を呼んだ活動についての解説はまっとうなものだったし、第2章における当代ストリートアートの紹介も本書を購入した目的に合致していてありがたかった。


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