yomoyomoの読書記録

2016年11月02日

高山知朗『治るという前提でがんになった 情報戦でがんに克つ』(幻冬舎) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 SNS 経由で本書の刊行の話を知ったとき、確か以前に癌闘病記をブログでまとめ読みした方の本らしいとピンときて購入した(Kindle 版もある)。

 それで本書を購入したのは、まとめ読みした闘病記のフラットな筆致が印象的だったのと、ちょうど長年お世話になっている年長の知人にシリアスな癌の告知を受けた人がおり、本書を読んでからその人にプレゼントしようと思ったからである。

 もっともその知人は職業上顔が広く、癌と分かれば、ワタシがあげなくても本でもなんでももらうだろうというベンジャミンの話を聞いたのと、またその人が民間療法に一時期頼ったという話もあって、結局本はその人に渡ることなく、未だ手元にあるのだが。

 本書は、40歳にして脳腫瘍、42歳にして白血病という文句なしのシリアスな癌との闘いを余儀なくされた IT 企業社長の闘病記を書籍の形にまとめたものである。

 ブログをまとめ読みしたときと印象は大きく異なることなく、この人はすごいと改めて感服した(なお、現在著者は元がん患者という扱いになっている)。

 いや、「すごい」とまとめられてしまったり、この人だから乗り越えられたと思われるのは著者としては不本意だろう。そうではなく、読者である我々にもその闘病から得られた知見を活かしてもらうために書かれた本だろうから。

 しかし、身近で何人も癌患者を見てきて、家系的にも(それなりの年齢まで生きられれば)おそらく癌で死ぬであろうワタシ自身にしても、なかなか本書に書かれるように徹底的に調べつくして医者に意見をぶつけ、納得いく治療を受けるとはいかず、ズルズルと現状に流され、最期には少なからず医者に恨み心も残してしまうのではないかと思うし、本書の内容は日本人で患者の数が多いであろう内臓系の癌に適用できないこともあるのだが、当然ながらそれは著者の責任ではない。

 基本的に著者は前向きに癌を乗り越えようと最善を尽くすのだが、ただポジティブ志向なだけではなく、そうした心性をとてもじゃないが保てないときのこと、治療の苦しさについてもちゃんと書いており、患者の周囲が心がけるべきことについての記述もあわせ、実用性を持った本であるのは間違いないし、上に情けないことを書いたが、本書を読んだ後では、いくらかは来るべき現実への処し方に変化があるはずだ。


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