2007年05月28日
徳力基彦『デジタル・ワークスタイル―小さなことから革命を起こす仕事術』(二見書房)
著者の徳力さんより献本いただいた。当方は、著者らが主催する FPN について必ずしも好意的でないことは何度か書いているが、Tomo さんが主催する P2P 関係の勉強会で何度か著者ののプレゼン力には感服し、歳も違わないのに当方とは大違いだと思ったものである。
本書の題名は、著者が ITmedia Biz.ID で行っている連載のタイトルに似ており、内容的にも一部重複するものの、基本的にはその前段階が中心なっており、本書でいうところのアナログ的な仕事法に留まっているビジネスマンを対象読者としている。
GTD(Getting Things Done)を中心とした Life Hack と総称されるネット時代のカイゼン術を扱う書籍は日本でも少なからず出ている。個人的には GTD については拭えない違和感があるのだが、それはここでは置く。ただ、その手の Life Hack は、最終的な目的を見失ってるように見えるものも散見される。
その点において本書は、典型的な日本の大企業とベンチャー企業の両方に身を置いた経験のある著者が、自身の失敗体験も踏まえて書かれたもので(「動きの鈍い会社に不満をいっている暇があったら、あなた自身がまず小さく行動することから始めてみよう」)、日本人のビジネスパーソンで本書から得るところの多い人は相当数いると思う。
というか、ワタシ自身ズボラな「自分の仕事に要する時間に無頓着」なところが多々あり、本書にも書かれるフラット化する世界で真っ先に仕事を奪われるエセホワイトカラーにならないか脅える人間なんだね。ルーチンワークも TODO リストに入れる、というのは思いつかなかった。いずれにしても、本書の冒頭に書かれるように、「インターネット時代の仕事術を、会社は教えてくれない」のだ。
Part 2「小さな努力で最大の成果を上げる」で紹介されるネット利用法については個人的には特に得るところは少なかったが、最後の Chapter 6「情報発信力編:仕事がデキる人になるブログ活用術」はとても良かった。ここも内容的には基本的なレベルだと思うが、著者個人の体験の裏打ちがはっきり見えるところが魅力で、本書の美点はやはりそこにあるとワタシは思う。
ブログを書くことのメリットとして「書くことによって自分の思考を整理できる」というのは、既に多くの人が言ってきたことだろう。しかし、それと本書の Part 1 の仕事術とのつながりや、自分の情報消化のためのブログ書法が、仕事が忙しいのだからブログなんて書いてる暇はないという認識だった著者が実際にブログを書くことで得られた実感とともに書かれると説得力がある。
次の単著では、もっと徳力基彦個人に引き寄せた話をもっと読みたいと思った。