2009年01月05日
Eric Sink『Eric Sink on the Business of Software 革新的ソフトウェア企業の作り方』(翔泳社)
編集者の方に献本いただいた。2008年は青木靖さんが翻訳した良書を多く読むことができたが、それらすべてを担当した、既に翔泳社にいない野口さんに感謝したい。
本書は序文を書いている Joel Spolsky の本の通じる内容であり、小さな ISV(Independent Software Vendor:独立系ソフトウェア会社)の経営者としてサバイブしてきた著者の起業論である。
私はこれを書いたときフラストレーションを感じていた。その時の業界のあり方に怒りを感じていたのだ。だから私は、不平を言うのはやめて、この業界で手に入るたくさんの現実的なチャンスに対してポジティブになろうと、世界に向けて説教を垂れたのだ。しかし本当のことを言えば、大部分は自分自身に対して説教していたのだ。(5ページ)
前にも書いたことがあるが、ふわふわしたウェブ2.0礼賛本よりも、本書のような自ら犯した失敗を小さなものも大きなものも披露し、現実的な教訓、忠告を導き出しながらそれでも挑戦を後押しするこうした本のほうが、これから起業する技術者たちの役に立つと思う。
私の要点は単純だ。小さなISVにおける決断にはすべて技術的な人間がかかわるべきということだ。小さなISVのする決断の多くには技術とお金の両方がかかわっている。これらの決断は本当に難しいものだ。(82ページ)
本書の白眉は第3部「マーケティング」である。本書にはポール・グレアムの「素晴らしきハッカー」に対する興味深い反論が含まれるが、自らプログラマを出自としながら、ハッカー原理主義の危険性を把握している。
しかしギークが競争的マーケットにおけるソフトウェア製品戦略について話し始めると、いつもは知的な人がまるでパリス・ヒルトンみたいになってしまう。私たちは単にわからないのだ。ギークは男が女を理解するのと同じくらいにしか市場競争というものを理解しない。(176ページ)
あと競合他社の必要性などポジショニングの話は、読んではっとさせられたね。