yomoyomoの読書記録

2007年01月25日

宮崎哲弥、川端幹人『事件の真相!』(ソフトバンククリエイティブ) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 ソフトバンククリエイティブの上林さんより献本いただいたものである。

 宮崎哲弥という人は、ワタシの中では好意的に見ている評論家に分類される。最近では明らかにテレビに出すぎで、言論人がテレビに出て良いことは金が貯まること以外何もないと考える当方からすると良くない傾向だが、本書ではその宮崎自身、「私はタレントであって、知識人じゃない(80ページ)」とはっきり言っているのだから書くだけ無駄なのだろう。

 本書はその宮崎哲弥が、今は亡き『噂の真相』の元副編集長だった川端幹人と組んだ本である。かつて自分のことを何度もけなした媒体の編集者を相手に指名するというのはそうできるものではないし、この連載を掲載し続けた『論座』も(朝日新聞社のくせに)やるじゃないと思ったが、立派なのはそこまで。

 本書は、「それにしてもこの男、ノリノリである」と宮崎哲弥を形容したくなるまえがき的対論から始まるが、せっかくこういうのを入れるなら、編集者も雑誌評という射程距離が短くなりがちなこの種の連載の弱点を補う俯瞰的な話をさせたらどうだ。

 問題の連載にしても、「ねぇ宮崎さん、もっといろいろ知ってんじゃないのぉ?」「いやいや、僕はそんな大物じゃありませんよ」的なオヤジ同士の会話がなかなかにキモく、読み進むうちにそういうのが蓄積されてゲンナリした。

 ワタシ自身はこの本を、昨年末回顧モードで読んだのでそこそこ楽しめたし、言説の中身自体は二人の信条の相容れない部分も含め、今読んでもおかしくないものが多かったことはちゃんと書いておきますけど。

 個人的には、「あらゆる国の属国になるというのも、それはそれでいいじゃない(203-204ページ)」といった川端幹人の言説に呆れるところがいくつかあったが、最後のあとがき的対論(タイトルが「あんた、テレビ出すぎだよ!」なのには笑った)を読むと自分のことを「サブカル左翼」ととらえているようだ。でも、そんな風に思っているの本人だけじゃないかしら。

 あと本書には、松永英明さんがイニシャル表記で登場したり、宮崎哲弥をリフレ派に転向させたとして山形浩生や稲葉振一郎の名前が出てくるという笑いどころもあった。


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