2005年12月21日
川上弘美『神様』(中公文庫)
川上弘美の本は『蛇を踏む』を踏む以来二冊目であるが、これもよかった。一冊の短編集としての満足度は本作のほうが上だった。
パスカル短篇文学新人賞を受賞した彼女のデビュー作「神様」にはじまり、その続編にあたる「草上の昼食」で終わる九つの短編は、どれも彼女らしい、こういう話をよく思いつくなという感じの作品世界に満ちていて、しかもその設定が寓意性に回収されることなく、そして読後も本書に登場する熊や人魚など登場ものたちが確かに心に残る。
解説で佐野洋子は「無意識」、「夢」をキーワードにしているが、川上弘美は夢を夢と区別していないところが強いのだと思う。
九つの短編のどれも違った味があって適度に好きだが、強いて挙げれば「花野」、「離さない」、そして「草上の昼食」だろうか。