2006年05月22日
山本一郎『けなす技術』(ソフトバンククリエイティブ)
ソフトバンククリエイティブの編集者よりいただいた。ご存知切込隊長の本だが、買っていなかったので都合がよかった。
書名だけ見て勝手にネット喧嘩指南や罵倒芸入門のような本かと思っていたのだが、
本書では、ブログというツールの機能よりも、使う思想にフォーカスして、何かをネット上で語ることの状況や意義について論じている。誰もが日ごろ行っている何気ない会話がネット上に出てきていることによって生じる意味と、それがどのような推移で他者に影響を与えうるのかという面からの考察を行うことで、ブログの流行という現象をどう読み取るべきなのか、ひいてはネット社会がどのような方向に向かいうるのかを私なりに議論してみた。(11ページ)
という通りのブログ本でちょっと驚いた。
いろんな話題にどんどん飛び移りながら、上述の問題について議論する本で、上に書かれる内容に興味のある人には楽しく読める本である。しかし、本書のタイトルとして「けなす技術」が相応しいかは疑問である。本書では批判的な言動をとる人を大事にすべきと説いているが、果たして著者自身は本書刊行から一年経ち、それをどう思っているのかなと考えたりもした。
あと章の最後に収録されている著者のブログからの抜粋は大した効果をあげておらず、単なる編集者の手抜きに見える。実際どうかは知らないが。
本筋から離れるが、『デジタル音楽の行方』の訳者的には、「ネット社会と音楽業界の絡み」(139-141ページ)の議論が『デジタル音楽の行方』と合致していて嬉しかった。
さて、本書の読書記録は以上だが、同じく本筋からは離れるが読んでいて気になった箇所をひとつ引用しておく。
単純に47氏のせんとしたことは、具体的な活動を伴ったコードに対する思想的・実益的な反抗であって、それが違法であり逮捕すべき性質のものであったかはともかく、どれだけ持続的かつ効果的にネット社会で運動化したかを観察しないことには、ネット社会が現実社会にどれだけのインパクトを与えうるものなのかは判断できないと思うからである。(149ページ)