2012年01月05日
東野圭吾『容疑者Xの献身』(文春文庫)
本書の著者は最近では「自炊」代行業者を提訴したりしてなんだかなという感じだが、それとは関係なく『探偵ガリレオ』に続いて読んだ。昨年末に映画版が地上波テレビで放映されたらしいが、ドラマ版同様未見である。
本作により著者は直木賞を受賞したし、またこれを巡って「本格」論争が起こったらしいが、ワタシはそれについてどうこう言えるような知識がないのでただの感想になるが、いやぁ、見事に騙された。これはよくできたミステリーである。
後になってみると、いや、そんなに死体処理が都合良くいくかとか、花岡靖子と元夫がファミレスで会ってるのを目撃した人も……とかいくつか思い当たるがアフターフェスティバル。石神に二重の意味で騙されたことは間違いなく、読者として満足である。
ただ本作を天才物理学者湯川学のシリーズとして考える場合、謎解きが湯川の専門分野から外れるため、必然的に湯川の人間的な面を強調しなければならなくて、そちらのほうがちょっと無理を感じた。
上述の通りワタシは映画版は未見だが、石神役が堤真一っておかしいよなぁ。映画版の評判もそこそこ良いということは、堤真一の演技が良かったのだろうが、やはり彼では石神にはかっこよすぎる。しかし、著者が執筆時想定したように湯川役が佐野史郎、そして石神役が……そうだな田口浩正だったら、映画はヒットしなかっただろう。映画『悪人』に通じるジレンマを感じるわけだが難しいものだね。