2008年11月04日
岸本佐知子『気になる部分』(白水Uブックス)
はじめに恥ずかしながら告白しておくと、ワタシは岸本佐知子さんの訳した本をまだ読んだことがない。
ただ以前から複数の人が岸本佐知子さんの文章の面白さについて書いていて気になったので文庫になっている本書を買ってみた。
……何ですが。これは? 最初読みながらワタシは何度も笑ってしまった。何て不思議で面白いことを書く人なんだ。そして……段々と怖くなってきた。この人は何者なんだ? 何でこんなことを思いついて書けるんだ?
岸本佐知子はとんでもない書き手ですし、『気になる部分』はとんでもない本です。ためになる、といった実用的な評価軸を外したら、ここ数年読んだ本の中で一番面白かった本かもしれない。
何気ない日常、あるいは彼女の執念深さに裏打ちされた記憶に彼女独特の切り口が入り、妄想癖がドライブする恐ろしさすら感じるすごい本である。いや、この人は一体何者なのだろう。
私は漠然と先が思いやられた。こんなことでは立派な大人になれないのではないかと子供心に不安を感じた。そしてその予感は、悲しいことに、おおむねは当たっていたのである。