2010年11月01日
水木しげる『水木しげる 恐怖 貸本名作選 墓をほる男・手袋の怪』(ホーム社漫画文庫)
前にも書いたが、「ゲゲゲの女房」は、今年の5月に旅先でたまたま見て面白いじゃないと見るようになり、最後まで見させてもらった。連続テレビ小説を録画して見るなんて初めてのことだった。
思えばワタシ自身は水木しげるの本を買ったことがなく、主にアニメや他の人が持っていた本を通じて読んでいただけだった。「ゲゲゲの女房」では貸本漫画家時代の貧困生活が印象的だったので、当時の名作選を試しに二冊買ってみた。
水木しげるというと、土着的なマンガというイメージを勝手に持っていたが、これらを読むとアメリカンコミックの影響など予想してなかった一面を知ることができて興味深かった。
しかし表題作の「墓をほる男」は、三島由紀夫が存命だった頃の作品であり、いくら人物設定を変えているとはいえ、今だったら一発アウトではないか。おおらかな時代だったというのもあるだろうが、当時の貸本がそれだけマイナーだったのだろう。
実際の事件に材を採った作品というと「ドギュメンタリー怪談(原文ママ)」を謳う「永仁の壷」もそうだが、こちらは宝探しの話に河童が実にうまく組み入れられており、冒頭の老婆のちょっとメタな台詞も面白い。
すべてが現在も名作というわけでは全然ないのだけど、ストーリーが進むにつれ主人公の表情に浮かぶ死相が尋常でない「鉛」や、文字通り水草のみで怪異を表現する「草」など心血を注いで書いたのだなと思わせる。