2005年02月10日
Klaus Wehrle他『Linux Networking Architecture』
以前にも書いたが、ワタシは Linux カーネルのネットワーク部についての詳細な解説本が欲しいと常々思っていた。現在出ている書籍の中で一番 Linux カーネルの詳細に立ち入った『詳解Linuxカーネル』は、ネットワーク部についてはほとんど記述がない。それを含めるともう一冊本が書ける分量になるので、といった理由が書かれてあったと思う。そう、ワタシはそのもう一冊が欲しいわけ(笑)。
もちろんそれは単なる概要レベルではなく、カーネルのソースコードに具体的に立ち入る本であってほしい。『LINUX IPスタックコメンタリーオープンソースコード詳解』という書籍はあるが、これは対象となっているのがカーネル2.0.30と古過ぎる。言うなれば、ライト/スティーヴンスによる金字塔『詳解TCP/IP〈Vol.2〉実装』の Linux 版が欲しいのだ。
で、現状では(タイトルからも想像できるように)本書が最もそれに近い本だろう。著者はドイツの Karlsruhe 大学のテレマティクス研究所のスタッフであり、本書は学生向けのテキストを想定して書かれている。これはワタシの要求をかなり満たしてくれる構成になっている。つまり、パケット構造体にはじまり下から上まで Linux カーネルのネットワークスタックを広範に扱い、図を多用して概要を視覚化しながらも関数単位でソースまで立ち入った解説がなされている。
何しろ600ページを越える大著なのでワタシもざっと眺めただけなのだが、Linux カーネル2.4系の具体的にどのバージョンを題材にしたか明記されていないという大きな問題はあるものの(見落としだったらすいません)、これはじっくりお付き合いできる本になりそうである。
といいますか、率直に言って、分量と範囲からして1人では無理としても、「これ翻訳してぇ」と思ったわけである。ただ、公式サイトを見ると、ワタシが読んでいるのは2001年末に出たドイツ語版の英語への翻訳(今年5月刊行)ということで、必ずしも新しい本とはいえない。うーむ。
それに本書が訳書であることは序文の謝辞の中に "The English translation was done by Angelika Shafir, whom we would also like to thank in this place." と一文あるだけで、翻訳者のクレジットはないに等しいのだが、米国における翻訳者の扱いってそんなものなの?