yomoyomoの読書記録

2008年05月07日

岡田有花『ネットで人生、変わりましたか?』(ソフトバンククリエイティブ) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 2年近く前に刊行された本を何で今更と思われそうだが、ワタシの住んでいるところがあまりにも田舎なため、編集者からの献本が届くのに一年半以上かかってしまったというウソのような半分ホントの話である。

 今や ITmedia の看板記者である岡田有花の記事を中心に編まれた本であるが、本書に収録している記事はひとつ残らず ITmedia 上で読んだことがあった。要はワタシ、こういう人にスポットをあてた文章が好きなのだ。

 だから本編自体に発見はなかったものの、そうはいっても改めて読み直してはっとする言葉もある。

「今は国内でブログが流行しだしたので、宣伝効果を狙って "はてなダイアリーもブログです" と言ってはいるが、もともとブログとは関係ない、オリジナルなサービスとして始めた。ブログは一過性のブームだから、数年後には沈静化し、いくつかのブログポータルがつぶれるような事態になるだろう。その時にも何事もなかったかのように涼しい顔をしてダイアリーを続けていたい」(p.33)

 およそ4年前の近藤淳也はてな社長の言葉である。その近藤さんに岡田有花はどういう印象を持ったのか。

私にとっては初めての本格的なインタビュー。ガチガチに緊張していましたが、近藤社長の "強い目力" と、借り物の表現を使わないオリジナルな言葉に魂を持っていかれました。帰り道は妙にハイテンションになり、「こんな人に出会えるなんてネット記者って幸せだなぁ」とうれしくなりました。(p.36)

 ベタ惚れやんけ。しかし、彼女の気持ちは分かる。実はワタシも近藤さんに話を聞いた後盛り上がり、社屋を出て鉢山町の路上でしばらく文字通り小躍りしてしまい、後の約束に遅れてしまったことがあるからだ。

 このときに火が点いた彼女のはてな愛は止まらない。

記事中に「両想いだった」なんて書いてしまったため、「伊藤さんと近藤社長が愛し合っているのではないか」という疑惑がはてなユーザーの間でささやかれたりしました。もちろん冗談なのですが、こんな記事の細かい点にまで突っ込みを入れてネタにしてくれるような熱心なユーザに、はてなも私も支えられているのかもしれません。(p.174)

 かくして id:kiyohero×id:nagayama、id:nagayama×id:mala と連綿と続くはてな801の伝統が生まれたのである(笑)。しかし、岡田有花もユーザに「支えられている」という意識をもっていたとはね。

 このように各記事に寄せられた「コメント」が面白かったが、読んでいて「あれ、もしかして」と気になるところがあった。

 記事にしなかった部分というのは、私が「スター・ウォーズを見たことがない」と打ち明けたとき、近藤さんが冗談で「それでもライトセーバー振り回す資格あるんですか!」と私に詰め寄った、という場面。あるユーザさんがブログでこのシーンを面白おかしく紹介してくれ、ちょっとした話題になりました。(p.297)

 いや、近藤さんの口調はマジだったと思うね……というのはともかく、これはもしかしてワタシの文章のことだったりする?

 まさかね……と思いつつ、恒例となったクリスマス記事の記事のコメントで、

 写真は、家の中で撮影しているものはすべて自分撮りですが、外で撮った写真は2005年からずっと、大学の後輩の女の子が撮ってくれています。(pp.340-341)

と撮影者についてわざわざ書いていて、これはやはりそのあたりを邪推したバカがいたからだろうか? そういえば本書を担当されたソフトバンククリエイティブの上林さんもそんなことを言われていたような……

 それはともかく、記事に寄せられたコメントをあわせて読むと、岡田有花の一貫した地に足のついた感じと、駆け出しの頃から自ら書籍化をもちかけるほどに記者として自分に自信を得るまでの一種の成長の記録として読める。

インターネットが、あなたの人生を少し楽しくできますように。あなたの今日が、昨日よりもちょっといい日になりますように。


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