2008年03月03日
ジェラルド・M・ワインバーグ『ワインバーグの文章読本』(翔泳社)
版権が取られているのを知って以来楽しみにしていた本である。担当編集者より献本いただいた。
本書を手に取り、まず何よりまたワインバーグ先生の新作を読める幸運を思い、また当時精神的に追い詰められていたためか、ワインバーグ先生一流のユーモア溢れる「あの」文章を読むだけで涙腺が緩んで仕方がなかったほどだ。
本書の射程範囲は広く、分野を絞らない。焦点を絞ったアドバイスを欲しい向きには不満が出るだろうが、自己表現としてのライティングを行う助けとなる普遍的な文章読本になっていると思う。
本書では「自然石構築法」という手法が説かれているが、この自然石はいわゆる「ネタ」のことであり、難しく考えることはない。
本書の欠点として、その自然石構築法についてきちんと定義していないところがあって、それが本書の飲み込みを悪くしており惜しいと思った。
ただこの自然石構築法、ネタとなる自然石を収集し、次に構成し、そして削ったり磨いたりする手法は、ワタシ自身がウェブに書く文章に採用しているものに極めて近く、心強く感じられた。
本書は、ワインバーグ先生が直に接したことのあるリチャード・バックの息子やディルバートの作者であるスコット・アダムスの話など、ちょっとした逸話、愉快なおしゃべりを交えながら、何が公正使用(フェアユース)か実は誰も分からないといったドキリとする話も含んでいる。本を書きたいという野心を持たなくても、自分のブログをより良いものにしたいという人にも得るところの多い本である。例えば「マタイ効果」の話などね。
本書18ページの記述によると、著者には30冊以上の本が完成を待っており、月刊誌のコラムの未完成原稿が36件、その他発表が決まってない原稿が27件あるそうだ。当方の父親とほぼ変わらない年齢のワインバーグ先生の文章を一つでも多く読みたいと願うばかりである。