2012年03月26日
内田麻理香『おうちの科学: 暮らしに効く おいしい!うれしい!なるほど!サイエンス』(丸善出版)
著者から献本いただいた。
「おうちの科学」ということで、この「家事×科学」は著者の看板の一つだと思うが、それについての著者の本を読むのは処女作『カソウケン(家庭科学総合研究所)へようこそ』以来である。
本書の最初に「家事には理屈がある」という文章がある。本書は一言で言えば「理屈」の本である。と書くと、魅力的には思われないかもしれない。「理屈が多い」「理屈っぽい」と言う場合、その対象を誉めていることはあまりないからだ。
しかし、確かに「家事には理屈がある」、つまり科学という理屈からは逃れられないわけである。本書は、2ページ毎にその「家事×科学」の理屈を繰り出す本だが、その理屈を退屈なものでなく「おいしい科学」「うれしい科学」「なるほど科学」の三部構成でできるだけ日常生活に即したなじみやすい形で提示する本である。
こう書くとただ科学の現世利益(と書くとヘンだが)だけを説く本のようだが、味からイメージする色の話であったり、天然は善で合成は悪という決め付けの問題などそこから少しはみ出る話題で広がりをもたせ、またそれを押し付けがましくない形で盛り込み読ませるところが著者の力量なのだろう。
一点、「塩や砂糖自体には防腐効果はありません。(47ページ)」という記述の少し後に「まず挙げられるのが、砂糖の防腐効果。(52ページ)」とあってのけぞったが、ただこれは両方とも同じことを書いており、ちゃんと読めば矛盾してないことが分かるのだが。
ワタシは現在は自炊をしていないのだが、昔は結構真面目にやっていたものである。しかし、悲しいかなこの「理屈」への配慮がなく総じてうまくいってなかったし、それを探究する好奇心が欠けていたため家事に楽しみも見出せなかったのだなと本書を読みながら思うことしきりだった。
どうでもいいようなことですが、長い間気にしていることって、実は「何か意味がある」ことなのかもしれません。心の底にしまっている、どうでもいいことに耳を傾けてみませんか?(39ページ)