yomoyomoの読書記録

2006年12月11日

平林純『理系のためのプレゼンのアイディア』(技術評論社) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 著者の平林純さんより献本いただいた。

 ワタシもいつの間にか古参呼ばわりされるようになったが、そうした人間からすると、平林さんのことは hirax.net というより「できるかな?」という名称で認識しており、マイペースでネット上の活動を続けてこられた方としてずっと憧れの対象であり、今なおそうである。

 本書は以前より定評のある著者のプレゼン術を披露したものである。一読して基本をしっかりおさえた、しかも読みやすさに配慮した本だと思った。当たり前に思えるレベルから着実に読者を納得させ、次第に高いところに持っていく、つまりは本書の表現を借りれば、「階段の段差」を低く保つ心配りの行き届いた本である。

 ただ「できるかな?」のおっぱい星人ネタでは嫌な感じはしないのに、著者が好んで引用する「文章の長さはミニスカートのようなもので(以下略)」といった表現、何かとミニスカートや下着(しかも「スカートの中の下着」とわざわざ性を特定している)を引き合いに出すところは、当方はフェミニストでもなんでもないが、こうした書籍で読むと率直に言って不愉快だった。注釈で引き合いに出しているサン=テグジュペリでもドラッカーでもいくらでもかわりにできたろうに。本書の副題の「理系のための」というのは、「助平な男性に笑ってもらえる」という意味なのか?

 とはいえ、そうしたところは鼻をつまんで読めば、文句なしの好著である。逆に言うと前述の通り読みやすい本で、それほど分量も多くないので甘く見てしまいそうになるが、プレゼンテーションをやる上での方向性の話も、具体的な方策やテクニックの話もしっかり入った本である。

 聴衆に視覚的に見せる上で陥りやすい失敗とそれを回避し、適確にこちらの意図を伝えるための見せ方を具体的に示してくれるChapter3「わかる「スライド・パーツ」の作り方――写真・イラスト・グラフ編」、Chapter7「魅せる発表テクニック」は個人的に特にありがたかった。特に前者は、社会人になって五年くらいしてようやくまともに PowerPoint を使えるようになったレベルのワタシには目から鱗だった。


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