yomoyomoの読書記録

2006年03月13日

祝康成『真相はこれだ!―「昭和」8大事件を撃つ』(新潮文庫) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 本書のことを知ったのは、ちょうど「そういえば丸山ワクチンって最近聞かないな。アレはどうなったんだ?」と思っていたところに、本書に収録されている丸山ワクチンの章をネットで読んで少しショックを受け、著者名で検索をかけたからである。

 題名の通り、本書が扱うのは昭和に起こった八つの重大事件である。本書の内容を丸々信用するのもそれはまた問題なのだろうが、大体はこの線なのだろうなと思わせる取材の厚みを感じさせる文章が並ぶ。

 例えば「三億円事件」の話などは既に他の本などで読んでおり、本書においても有力容疑者として挙げられる白バイ隊員の息子の話は知っていたが、容疑者として逮捕された挙句恐ろしいほどの報道被害を受けた人物がいたこと、そしてその人の取調べに昭和の名刑事と言われた平塚八兵衛が携わったこと(そして彼の真骨頂が「鉄拳」だったこと)、そして何より本書を買うきっかけとなった丸山ワクチンの章で、その発明者である丸山千里氏の御子息が、我が訳書に推薦の言葉を寄せてくださった丸山茂雄氏であるのを恥ずかしながらはじめて知った。

 本書を読んでいささか暗澹たる気持ちになるのは、昭和は遠くなりにけりと言われてだいぶ経つ現在においても、本書に扱われる事件の後遺症を日本社会は抱えていることである(そのすべてとは言わないが)。

 例えば和田心臓移植事件は日本の臓器移植に拭いがたい汚点として残り臓器移植医療に影を落としているし、丸山ワクチンの話だってそうだろう。美智子皇后の「失声症」の悲劇は、雅子妃殿下に「適応障害」として連鎖してしまったように思え悲しみと怒りを覚える。誰もちゃんと責任を取ろうとしない事なかれ主義が成田空港をまったくもって不完全な国際空港にしたが、これなどとんでもない国家的損失だよ。ワタシは自衛隊にはその役割相応の地位と権限を与え国防にあたらせるべきだと思うが、潜水艦「なだしお」東京湾衝突事件についての記述を読むとなんともやりきれない。

 なんか暗い内容ばかりになってしまったが、最後の「世紀の対決「猪木・アリ戦」の裏ルール」は、その昔猪木イズムに心酔し、しかし現在ではその方面から足を洗って関連書籍なども読んでいない当方にはありがたい文章だった。


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