yomoyomoの読書記録

2007年07月09日

佐々木俊尚他『SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?』(翔泳社) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 孤高の編集王モーリさんより献本いただいた。

 当方は狭義の SNS では mixi ぐらいしか利用しておらず、あまりピンと来ないというか読んで得るものあるか少し疑問だったが、存外楽しめた。

 個人的には招待制のクローズド志向のソーシャルネットワークサービスは、検索性などの点から俗に言う Web 2.0 の範疇から外れると考えており、そうした意味で mixi が日本におけるウェブ2.0(何だそれ)の代表のように取り上げられるのにずっと違和感があった。mixi のコミュ程度で CGM を称するなら、2ちゃんねるだってウェブ2.0だろうに

 ただ Web 2.0 の潮流を踏まえる場合、コアとなるアイデアがよほど突出して強力とかでない限り、ウェブサービスにソーシャルネットワークの要素が必要不可欠なのも確かで、そうした意味で現時点でのまとめとして本書は個人的にありがたかった。余談だが、日本の SNS サービスとして、gree や mixi より livedoor アミーゴのほうが先に始まっていたなんて知らなかったな。

 PART1の佐々木俊尚さんのまとめ記事はいつもながら手堅い内容だったが、ナナロク世代によるネットベンチャー企業を指して、

 これらの企業の目立つ特徴としては、高い技術力を背景にして、よく練られたビジネスモデルを持っていることである。(19ページ)

というのに椅子からころげ落ちそうになった。「よく練られたビジネスモデル」ねぇ……

 PART2「ソーシャルメディアの可能性」も海外の SNS、モバゲータウン、そして Twitter や Vox といった最近のサービスまで網羅して充実しているが、PART3「素晴らしき「マイミク」の世界」はその名の通り mixi に特化した内容(田口和裕さんの独壇場ですな)、そして PART4「本当は危険なSNS」は……と読んでいくと、本書の内容への不満ももたげてくる。

 上述の通り本書の PART3 は mixi に特化した内容でそれはよいのだけど、その前の PART2 の SNS 事例紹介の中で gree などの日本の他の招待制 SNS についてももう少しページを割くべきだし、PART4 のような SNS のリスクについての記述ももちろん必要なのだけど、それで本が終わってしまうというのは読後感がよくない。

 思うに PART2 は現状の国内国外の SNS のまとめに徹し、PART4 の後に、以下に引用する問題意識に応える SNS の未来、可能性について章を設けたほうがよかったのではないか。

しかしSNSの可能性が一〇〇だとしたら、単に人と触れ合いたいというニーズはその可能性のうちの五や一〇程度しかないのではないか? ひょっとしたらSNSにはまだ九五の可能性があって、手つかずに残されているのではないか?(28ページ)

 もう一点。シナトラ千代子さんの絵と文章を本で読めて盛り上がったが、どうせなら見開き2ページどーんと埋め尽くすような迫力ある絵があるとよかったな。注文ばかりで申し訳ないが。

 あと本書を読んで改めて思ったのは、モバゲータウン恐るべしということ。ケータイ小説の次は「音楽」が投稿可能になったとのことで、まだ展開がありそうだ。


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