2015年06月04日
Sanjoy Mahajan『掟破りの数学 ―手強い問題の解き方教えます―』(共立出版)
共立出版の方に献本いただいた……のだが、なぜワタシが数学の本を献本してもらえたのか。
理由は5年近く前にブログで原書を紹介していたからなんですね。実を言うと、自分でも紹介していたのを忘れていたくらいだが、お声をかけていただいた共立出版の方に頭が下がる思いである。
当時原書のことを知り(タイトルは言うまでもなく、ローリング・ストーンズの "Street Fighting Man" のもじりですね)、タイトルから『ヤバい経済学』のような一般的な問題を経済学者がズバっと切るような本を予想し、その後オンライン公開されている原書をちらと見て、これはそんな簡単な本ではないな、と原書を読み進めるのを諦めた記憶がある。
で、今回訳書を見てみて、やはり同じ感想をもった。「シンプルに,シンプルに」「ざっくりと」「図で証明」「類推」という章タイトルを見ていると、とても数学の本に思えないのだが、本書はまぎれもなく数学書なのである。だから本書は、数式が苦手な人でもすいすい読める痛快な本、ではない。そこが面白いところでもあるのだが、そのあたりはちゃんと覚悟して本書を手に取ること。あと、原書は5年前のものだが、数学という分野はその程度の経過では全然古くならないところが強いよね。
著者は「まえがき」で、「あまりに数学的な厳密性にこだわる数学の教師は、死後硬直したものを教えている」という宣言から始まるが、いわゆるテストの答案として満点をもらえるやり方でない、証明なし、計算なしで答えを予想することを目的としている。
そうした意味でワタシ的には、第3章「ざっくりと」がとっつきやすかったし、あと問題の好みで第4章「図で証明」も面白かった。
「まえがき」を読んで今更ながら気付いたのだが、原書の内容は元々 MIT の講義内容を基にしたもので、OpenCourseWare 経由でクリエイティブ・コモンズの表示-非商用-継承ライセンスの元でオンライン公開されたんやね。それがワタシが原書を紹介するとっかかりとなり、そしてこうして訳書がワタシの手に渡ることとなったのだが、少し不思議な気持ちになる。