2009年11月30日
津田大介『Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社)
はじめに告白しておくと、本書の刊行を知り、目次に「tsudaる技術」という文句を見つけたとき、てっきりワタシにも献本があるのだと高を括っていたため読むのが遅れた。謙虚でいたいと思いながら、その実思い上がっていたのを「金髪の王者」に思い知らされた形である。
本書は、Twitter(ツイッター)の概説である第1章、著者との Twitter との関係と活用法を辿る第2章、Twitter が現在社会にどういう影響を持ちつつあるのかを語る第3章、そして勝間和代との対談からなるが、津田から目線に貫かれた本と言える。
ツイッターは、「人間が一番面白い」という当たり前の事実を明らかにしているのだ。人間が本来的に持つ面白さを「濃縮還元」するプラットフォームと言えるかもしれない。(44ページ)
本書に対する不満を二点挙げておく。まず一点目は、著者の具体的なツイッター環境、過去の試行錯誤を含め具体的にどういうクライアント、サービスを使っているのか第2章を読んでもよく分からないこと(モバツイッターへの言及はあるが)。本書は飽くまで「社会論」ではあるのだけど、上記の通り津田から目線の本であり、そのあたりを開陳することも読者にとって有益ではないかと思った。
不満の二点目は、本書にはいろんなウェブサイトや人が紹介されるが、その URL の紹介がマチマチなこと。それ自体は大きな問題ではないのだけど、この本に限らず版元なり著者がサポートページなり用意して、本で紹介したウェブサイト(サービス)の URL を列挙すべきではないかと思う。
本書で一番面白いのは当然ながら第3章「社会に広がるツイッター・インパクト」で、この章における Twitter の可能性を主張しながら、ジャーナリストとしてのバランスも保とうとする文章の押し引きに、『だれが「音楽」を殺すのか?』以来久方ぶりに自分は津田大介の本を読んでいるのだという一種の感動を覚えた。
著者はあきらかに Twitter にはブログや SNS にはなかった(あるいはそれらとは違った)ものがあり、Twitter が社会的インフラになる大きな可能性を信じている。ワタシ自身はそこまでは評価はしていないのだが、これは個人的な事情に依るのかもしれない。ワタシはリアルタイムなパフォーマンスが不得手で、考えをまとめるのに時間がかかるからこうして自分のサイトに文章を書いているところがある。今後ますますウェブがリアルタイムに向かうなら、ワタシのような雑文書きは淘汰されてしまうのだろう。
あと勝間和代との対談だが、ワタシ自身は彼女の本は『お金は銀行に預けるな』を一冊読んだだけで、オラも投資信託をはじめようかと思いながらグズグズしてたらサブプライム問題が炸裂して、本のアドバイス通りにしなくてよかったと思うくらいで特にこの人に好悪の感情はないのだが、この対談では「tsudaる」は twitter と語感が似てるから流行ったとかはっとさせられる話があったり、何よりすごくさばけた感じが面白かった。