2013年03月28日
フィリップ・K・ディック『ユービック』(ハヤカワ文庫)
随分前に買ってあったのに、えらく長くほったらかしだったし、読み出しても何故か読了まで時間がかかってしまった。ディックの長編を読むのは『死の迷路』以来で……って10年以上ぶりか。あれよりはっきり出来が良いはずなのに、なんでこんなに時間がかかったか分からない。
物語は、超能力者たちとその能力を無効化する不活性者たちの戦いが始まると思いきやいきなり事態は暗転し、その後は誰が死んでるか生きてるか分からないという現実崩壊状態に送り込まれるというディックらしい作品である。
この何が現実/虚構か、誰が生きているのかという感覚は極めてディック的なのだけど、中盤の倦怠というか閉塞というか放り出された感じにちょっとつまづいたんだろうな。でもそこを抜けるとサスペンスとして面白かった。ジョー・チップに「症状」が起こり始めてからがよかった。
ディックの作品にしては主人公ができるだけの行動をするし、ラストのあっとなる感じを含め、まとまりもよいと思う。
ワタシが読んだのは文庫版だが、Kindle 版も出てるよん。