yomoyomoの読書記録

2013年05月23日

津田大介『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書) このエントリーを含むブックマーク

表紙

 3月の出張時、判断ミスで本をあまり持っていかなかったため、現地で読むものがなくなり困っていたところ、以前半額セール時に電子書籍を購入していた本書のことを思い出し、iPhone で一気に読んだ次第である。よって左で紙版にリンクしているが、ワタシが読んだのは Kindle 版である。なお、著者の前作『動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか』は書名の時点で興味が持てず未読である。

 正直、読後もやもやしたものが残った。

 一冊の新書として読むなら、十分な情報量がある本だろう。終章にいたって Gov 2.0 エキスポの取材結果が並ぶなど本の構成には疑問があるが、取材はよくしてあるし、著者の問題意識はちゃんと伝わる。何より著者の(政局でなく)政策にフォーカスした新しい政治ネットメディア構想には大いに共感する。本書を読めば、そのネットメディアにつながるであろう著者のデータジャーナリズムへの興味の必然性も分かる。

 それでいいじゃないの。何でもやもやするのか。

 やはり、本書が刊行されて半年経った本文執筆時点まで、その問題の「新しい政治ネットメディア」が立ち上がってないという現実がひっかかるのである。

 これを本書の読書記録で書くのはフェアではないだろう。が、やはりそれが立ち上がらない以上、本書についても評価が定まらないと思ってしまう(これは著者から政治ネットメディアの話を本書刊行よりずっと前から聞いていたので尚更そう思うというのもある)。

 本書刊行後、ゼゼヒヒがローンチした。最初ワタシはサイト名だけ聞き、政策重視の政治メディアへの実にうまいネーミングだなと感心したのだが、これはそれではないという。

 著者の発言を聞けば、ゼゼヒヒというサービスの意義は分かる。しかし、著者が(ゼゼヒヒを作る上で参考にしたと語る)診断メーカーを面白いと感じないように(これについては同感)、ワタシもゼゼヒヒをもうあまり面白いとは感じないし、少なくともアンケートに回答することはなくなった。やはり、真打が出ないことにはどうにも判断できない。

 あと気になったのは、本書で何度か佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長が取り上げられていること。本書に一線を越えた表現はないが、武雄市図書館問題についていろいろ読むと、「ウェブで政治を動かす」のもその身近な実例を見る限り、随分と危なっかしいものだと思ってしまうのも確かだ。著者はこの図書館問題について本書刊行後、何か発言していただろうか?


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