2006年09月11日
アスキー書籍編集部編『検証・ウィニー情報流出対策 実はウィニーだけの問題ではなかった』(アスキー)
本書の一部を執筆している宮本久仁男さんにいただいた本である。
結論から書くと、Winny 自体並びに今年特に取りざたされた Winny による情報流出の概要が分かっている人は、特に本書を読む必要はない。
本書が必要なのは、パソコンをそれなりに使っているが、その動作原理には疎く、最近の報道を見てよくは分からないが自分も何か被害にあう可能性はあるのかと不安に感じているエントリユーザ層、そして勤務する会社なりの情報流出への対策に関わる人だろうか。要は Winny を使っているか否かに関わらず、よくは分からないが不安に思っている人たちである。
本書は冒頭で、「本書では、ウィニーを悪用した著作権法違反の問題については主題からはずれるためこれ以上取り上げない。(11ページ)」とばっさりそちら方面の話を切り捨てており、背景説明でも WinMX の名前が出てこないくらいで、とにかく Winny による情報流出の実際、並びにその対策の話に完全にフォーカスしている。そうした狭い範囲の本とも言えるが、セキュリティの話が1アプリだけで終わらないという正道はちゃんと押さえられている。本書の副題はそれを伝えているのだろう。
106-113ページの「ウィニーネットワークを御すことはできるか」、特に篠田陽一北陸先端科学大学院大学教授のウィニーネットワーク観察プログラムの話だけは興味がそそられた。やはり Winny の作者自身の手による『Winnyの技術』も読まないといけないのかなぁ。
しかし、アスキーも新書を出すとは。まさに仲俣暁生さんが言われるように新書最終戦争である。本書なんか、文章に挿入されるマンガの一部が本書の理解に何ら役立っておらず首をかしげながら読んでも、一二時間もあれば読める本である。Winny による情報流出だけで一冊の本になる。これまた仲俣さんが言われるように、書籍の「ソーシャルブックマーク化」の一例なんだろうな。