ラーメンをめぐるあれこれ


「料理にも出自があるわな」
「何だよいきなり。料理の出身地ということ?」
「そうそう。例えばピザはイタリア料理だし、餃子なら中華料理という風に」
「うん」
「ラーメンってあるじゃない」
「そりゃあるだろうさ。好物だよ」
「お前でなくても好きな人は多いだろう」
「何が言いたいわけ?」
「あれはどこ料理になるのかな」
「そりゃ中華料理だろうさ。支那そば、中華そばともいうくらいだし」
「うむ、そうだろうね、ラーメンマンの故郷でもあるし」
「それはゆでたまごのマンガの話だろ」
「しかし、ラーメンマンはモンゴルマンにもなった。もしかしたらモンゴルが原産地かな、と思ったわけだよ」
「だから、それ『キン肉マン』の話だって!」
「でも『キン肉マン』の続編を週刊プレイボーイで見かけたときには狂喜してしまったけどね」
「編集者も目の付け所が鋭いというか、でも読んでて嬉しいのだけど気恥ずかしさも感じるという・・・ところでラーメンの話はどうなったのさ」
「いや、問題はそこなんだ」
「どこなんだか」
「さっき言ったように、ラーメンは日本で非常に人気のある料理なわけだ。お前が好きかどうかはどうでもいいくらいに」
「最後のは余計だぞ」
「でもどうしてそこまで人気があるのだと思う?」
「ん? ・・・あまりそういうこと考えたことないな」
「地域性、多様性を持っているからではないかと俺は思うわけ」
「なんだ地域性って?」
「ラーメン、と一言でいってもさ、各地で味が違うわけじゃない。特にスープが」
「なるほど。博多ならとんこつだし、札幌なら味噌だし。他にも塩、醤油、鶏がらという風にいくつもあるな」
「うん、はじめ塩ラーメンと聞いたときには、麺が塩漬けにされたものがでるのか、と塩辛いものが好きな俺も少しびびったもんだ」
「あるか、そんなラーメン」
「で、ラーメンは中華料理だとして、そもそも元祖のスープは何だろうかと思ったわけ」
「考えたことなかったな・・・俺は九州出身だからとんとつを推したいが」
「それが違うんだな。そもそもとんこつラーメンというのは昭和12年に、久留米の屋台で生まれたものらしい」
「へえ、そうなんだ。となると醤油かねえ」
「多分そうなのかな。俺にも分からなかったので聞いてみたんだが、お前なんかを頼りにしたのが間違いだった」
「最後の一言が余計なんだよ、お前は。でもさ、さっきの話からするとさ、本場にだって地域性があってもおかしくないわけだ」
「どういうこと?」
「いや、つまり中華料理にも四つぐらい代表的な流れがあるじゃない。四川とか広東とか」
「四川風ラーメンのスープなんか辛そうだな。確かにそうかもしれんね。あの国でも各地で違う。そこにビジネスチャンスも生まれると思うんだな」
「何だよ、いきなり。お前が言うと胡散臭いな」
「いや、お前の言う通り、あの広い国なら各地でスープの味が全然違ってもおかしくないわけだ」
「日本のような狭い国だってそうなんだからな」
「そう、しかしあそこはまだ発展途上だから、日本よりは情報にしろ人にしろまだまだ流動性が低いと思うわけだよ」
「そうかねぇ」
「そこでだ。日本のラーメンを逆輸出するんだよ」
「本場にか? それって勝算あるか?」
「いや、だから本場の味と同じようなもの持っていってもしょうがないよ。ちゃんとマーケットリサーチをやって、その地域の流れとは違うものをぶつけるわけだ。味噌ラーメンなんか驚くと思うよ。個人的にはあんなもん食う人間の気がしれんが」
「お前最後の一言が余計なんだよ。北海道の人を敵に廻すぞ」
「それにさ、俺も実は元祖はとんこつだと思っていたクチでね。でもそうでなくてさ、本場の人達があんな美味いスープ飲んでないとすると、これは国家的損失だと思うのよ」
「大袈裟だな。メインにしないだけで、豚からスープ取るというのは今でもやってるに違いないと思うが」
「中国でラーメンチェーンなんてでかいビジネスになると思うんだけどねえ」
「まあ、人口12億だからな。軌道に乗ればかなりの儲けになるな」
BOOK OFF ってあるじゃない。俺あそこで『寄生獣』全巻読破したんだけどさ」
「ホントたちの悪い客だな、お前は」
「あそこの社長のインタビューをニューズウィークで数年前読んだんだけど、次はラーメンチェーンをやりたいと言っててね」
「BOOK OFF あんだけ成功してるのにか?」
「いやね、BOOK OFF という名前には『本離れ』という意味もあるらしくてね、社長本人としても本から実は離れたいらしいとさ」
「へー、それは知らんかった。別に本じゃなくてもいいわけだ」
「そろそろあの人もラーメンビジネスのことを本腰入れ始めた頃かなと思ってね。俺のアイデアを買ってはくれないかな」
「お前が考え付くことなら、あの人も考えて、却下してるさ」
「そうかな、チクショー。今度は『妻をめとらば』を全巻立ち読みしちゃる!」
「アホか、お前は」
「話は変わるけどさ、ラーメンというのはスープだけじゃないわけだ」
「麺のことか? 当然そっちも重要な要素だな」
「近頃ではインスタントのラーメンも随分進歩してね。マルちゃんの『麺づくり』なんてかなりよくできていると思うわけだよ。これまで食った中で一番美味い」
「そこまで言うか」
「で、またそこで中国が出てくるわけだ」
「どこからだよ」
「中国にもこれからコンビニが本格的に出店していくと思うんだけど、そこでマルちゃんの『麺づくり』うけると思うんだけどな。中国人のライフスタイルも変わってくるだろうし」
「お前の個人的な好みを根拠にされてもなあ」
「でも、ホント美味いぞ」
「お前マルちゃんから何かもらっているのか?」
「それはない。だけど、くれるというなら相談に乗る用意はある!」
「勝手にやってろ」
「でも、中国人はどういうラーメンを食っているんだろねぇ」


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初出公開: 2000年11月06日、 最終更新日: 2002年07月13日
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