音楽DRMの終わりのはじまり

著者: Fred von Lohmann

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Fred von Lohmann による Beginning of the End for Music DRM の日本語訳である。


今日リアルネットワークスは、Rhapsody 音楽サービスのウェブベースバージョンが利用できるようになったことを発表した。ようやく Mac や Linux で利用できる、メジャーレーベルのカタログがオンデマンドで聴ける認可を受けた音楽サービスができたわけだ。Napster 2.0 と Yahoo! も、同様にクラスプラットフォーム対応でブラウザベースのソリューションに移行する競争圧力を感じることになるだろう。

今回の発表で驚いたのは、暗に DRM を排除していることである。リアルネットワークスが Rhapsody を「ストリーミング」音楽サービスと宣伝してはいるが、広く利用されているソフトウェアツールを使えば、その「ストリーム」を「ダウンロード」に簡単に変えられるのは皆知っていることである。例えば Audio Hijack を使えば、僕の Mac OS X マシンで何の問題もなく Rhapsody のストリームを保存できる。また Linux ユーザもじきに「DVD Jon」のおかげで Rhapsody をサポートする新手の「ストリームをリッピングする」アプリケーションを手に入れるであろうことを皆知っている(訳注:原文の before you can say "DVD Jon" は before you can say Jack Robinson(あっという間に)と「DVD Jon」ことノルウェー人プログラマー Jon Johansen をかけている)。Rhapsody が、既に P2P ネットワーク上で無料で入手できる音楽を制限しようとする見当違いの試みで足を引っ張るよりも、サービスで消費者をひきつけることに集中できるようメジャーレーベルのライセンス供給者を説得してきたことは明らかだろう。

これは良い兆候である。今や音楽産業はバットを振り回すのでなく、果実を実らせることにもっと力を注ぐ必要があるということを我々は何年も言い続けてきたのだから。

音楽 DRM の終焉が近づいているかもしれない兆候は他にもある。第一に、Sony-BMG の大失敗により、間違いなくレコードレーベルは CD 上の DRM の価値を見直すことになった。それに加え、アップルは iTunes ミュージックストアの顧客が購入したものをプロテクトのない CD に焼けるようにして、それを制限なしにリッピング、複製可能にすることで FairPlay DRM を回避することを許している。それにメジャーレーベルが認めた音楽サービスはいずれも、Windows Media ファイルにより厳しい DRM の足かせを課すことになるマイクロソフトの「Secure Audio Path」技術を拒絶している。

その一方で、法を遵守する消費者は、音楽を iPod に移すのを困難にし、お金を払っている会員に新たにエラーモードをもたらす DRM スキームに不満を募らせている。それらのいずれも P2P ネットワークでのファイル共有の防止にはつながっていない。

つまり、デジタル音楽の DRM の崩壊に乾杯ということだ。DRM がなくなってしまえば、我々は真の、強固で競争力のあるデジタル音楽市場がどんなものであるかを目の当たりにできるだろう。


[翻訳文書 Index] [TOPページ]

初出公開: 2005年12月27日、 最終更新日: 2005年12月27日
著者: Fred von Lohmann
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
本文書はCreative Commons米国版のattribution-noncommercial 1.0でライセンスされたものを翻訳し、Creative Commons日本版の帰属-非営利2.1ライセンスで公開したものです。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
本文は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。