The Goog Life:グーグルが従業員を子供扱いすることでつなぎとめている件

著者: Aaron Swartz

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Aaron Swartz による The Goog Life: how Google keeps employees by treating them like kids の日本語訳である。


先日友達と、シリコンバレーで絶えず会話のネタになるもの、Google の話をしていた。で最後に、彼女がすべてに筋を通すヒントをくれたんだ。「子供扱いしてるのよ」と彼女は語った。「ただ飯をあてがい、洗濯をしてやり、弾力のある色鮮やかなボールの上に座らせる。彼らが成長し、自力で人生を生きる方法を学ぶ必要がないようにすべてをやってあげるわけ」

そのように見れば、Google がやることすべてに恐ろしくつじつまが合う。

僕が Google を最後に訪問してから大した変化があったわけじゃない。キャンパスはより大きくなっている――通りの向こうの建物は、Google の留まるところを知らない成長に対応すべく、弁護士やその他の下層連中にあてがわれることなく、現在もこれまで同様技術スタッフに利用されている。しかしそこで働く人たちは、最後に僕が訪れたときほど興奮してるように見えない。誰も「僕らには世界を変える使命がある!」とはもう言わない。今じゃ彼らは、「ああ、オプションが確定するまで、もう6ヶ月ここでブラブラするつもりなんだ」とか「僕としては今のグループを抜けたいんだけど、他のどのグループももっとひどいんじゃないか心配でね」と言っているんだ。

それでも、キャンパスには露骨な変化が二つあって、それはメインのビルの中央に宙吊りにされた巨大でひどい見た目のスペースシップワンの模型と建物の外に立つ恐竜の骨格模型だ。「それってまるで、この場所は七歳児に飾りつけされてますって感じ」と友人は評する。僕もロバート・ライヒ(訳注:元アメリカ合衆国労働長官)のニュート・ギングリッジ(訳注:元アメリカ下院議長)についてのコメントを思い出す。「彼のオフィスは恐竜のフィギュアで飾られていて、いつか強く大きくなることを夢見る男の子の寝室みたいだ」

恐竜や宇宙船は確かに子供扱いというテーマに合致するし、Google 社員が飛びこみ、ボール遊びを興じることができる浴槽大のボールピットもまたしかり。僕が知るそこで働く人は皆、子供っぽく振舞うか(大勢のプログラマ)、ものすごく青臭いか(彼らのマネージャや監督者)、あるいは芯までシニカルか(第一線のプログラマ)のいずれかである。彼らにしても Google を離れたいと思うかもしれないが、この子供扱い戦略が効いてきた。彼らは自分たちが Google 以外のところでは生きてゆけないのではないか心配なのだ。

Google は大学から直接プログラマを雇用し、彼らを大学生活にあるあらゆる利点でひきつける。事実、求人パンフレットが強調するように、その職場はあからさまに大学を模している。ひところ僕は、どうして Google はいくところまでいって社員寮を作らないのかと思ったものだ。結局のところ、自分と同じく頭の切れる人間と深夜に学生寮で交わす会話こそ大学生活の最良のものの一つじゃなかっただろうか? でも、Google の威光が薄れるにつれ、それが誰もそんなに長くたむろしたいと思う場所でない理由が僕にも分かる。マウンテンビュー郊外の砂漠でさえもそれよりはマシだ。

Google の有名な秘密主義は、実際には競争相手から情報を守るのにあまり役に立っていない。本当に好奇心の強い人なら、十分なリーク情報を手に入れ、どうやって大方すべてが機能しているのかを理解するのに十分な記事を読むことは可能だ。けれども Google があえてそうしているのは、場の周辺に不可能性のオーラを作り出すためである。人々は講演や学術論文で Google の技術についてエアブラシ加工されたものを読み、Google には驚くほど強力な技術を有する驚くほど大きなコンピュータ研究所があると考える。しかし、十分な時間 Google 社員とつるんでみれば、彼らが GFS(訳注:Google File System)の信頼性のなさや、実は負荷に対応するのに十分なコンピュータがないのに不平を言うのを聞くことになるだろう。

「ソーセージが実際に作られるところを見るのはいつだって恐ろしいものだ」とあるプロダクトマネージャは説く。そしてそれこそが、Google の秘密主義が防がなければならないものなのだ。その壁の内側にいる少数の精鋭たちが真実――そこに「そこ」はない(訳注:there is no there there ガートルード・スタインの有名な言葉)――を知り、この重責に縛り付けられている一方で、世界中の残りの人たちは、Google をその内部世界にあらゆる神秘を備えた計り知れない組織だと見ている(「君はそこで256日働いてその秘密主義を教えてもらったと聞いてるけど」と xkcd は説明している)。

そうした戦略は、Google 社員が少数精鋭だった初期にはうまく機能したのかもしれないが、企業規模が大きくなり、従業員の Google との一体感が薄くなるにつれ、Google は従業員の順応を強化しなくてはならなくなる。そこで等身大の恐竜模型の登場ですよ。可能なうちに、巨大でパワフルなのを楽しむがいい。なぜなら恐竜同様、いずれ Google も滅びるんだから。


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初出公開: 2006年12月25日、 最終更新日: 2006年12月26日
著者: Aaron Swartz
日本語訳: yomoyomo(ymgrtq at yamdas dot org)