著者： Rebecca Blood
日本語訳： yomoyomo
以下の文章は、Rebecca Blood による Bloggers On Blogging: Bruce Schneier の日本語訳であり、著者の許可を得て公開するものである。
Bruce Schneier は非常に人気のあるブログである Schneier on Security を2004年10月に始めた。彼は BT Counterpane の CTO であり、八冊の本の著書である。彼の著書にはベストセラーになった『セキュリティはなぜやぶられたのか』、『暗号の機密とウソ』、『暗号技術大全』、そして『Practical Cryptography』がある。
44歳の Bruce は、ロチェスター大学で物理学の学士号、アメリカン大学でコンピュータサイエンスの修士号を取得している。彼は有力な暗号アルゴリズムである Blowfish と Twofish を作り、議会で証言をし、また政府の複数の技術委員会で委員を務めている。彼は電子プライバシー情報センターの理事、EFF や ACLU の顧問を務めている。Bruce は妻である Karen Cooper と二匹の猫とミネソタで暮らしている。
最初に読まれたウェブログは何でしょうか？
正直思い出せないのですが、自分はブログに乗り遅れた人間だと思っています。私は2004年の大統領選挙期間中に政治系のウェブログを定期的に読み始めました。その前は、何人かの友達のウェブログをごくたまにちら見するぐらいでした。
なぜご自分のウェブログを始めたのですか？
私は1998年から Crypto-Gram（訳注：日本語訳）という月刊の電子メールニュースレターを配信しています。Crypto-Gram は、多くの場合ニュース記事を契機とする様々なセキュリティの話題を扱ったエッセイ、並びに私が読者に注意を向けたいと思う他のニュース記事やウェブページへのリンクから構成されていました。Crypto-Gram はとても人気がありましたし、私も作るのを楽しんでいました。
いろんな人たちが私に Crypto-Gram をブログにするように勧めましたが、私は抵抗しました。月に一度というスケジュールがあったので、ある問題について書く前にそれをしばらく自分の中で広げることができたのです。またそのおかげで書きたいものを書きたいときに書くことができました。毎日何かを書くよう強いられたくはありませんでしたし、毎日何かしら書く十分な時間にしろ題材にしろあるなんて想像できませんでした。ですから、私は Crypto-Gram の月一回の配信ペースを維持したのです。
問題は、他のブログが私のエッセイになかなかリンクしてくれないことでした。というのも、私がエッセイを配信する頃までに、それはどれも古いニュースになっていたからです。そこで Schneier on Security ウェブログを Crypto-Gram のエッセイを事前に公開する手段として開始し、他のブログがエッセイを取り上げられるようにしたわけです。つまり最初、Schneier on Security はそうした性質のものでした。しかし何ヶ月か経つうちに徐々にエントリがブログ的なものになっていきました。私がよりブログ的なエントリを書き始めたのです。ブログが普通やるようにマテリアルを引用し始めたわけですが、それは元々の Crypto-Gram では滅多にやらない手法でした。
そして徐々に、Schneier on Security が Crypto-Gram のブログバージョンなのではなく、Crypto-Gram が私のブログの月刊電子メール版になったのです。実際 Crypto-Gram はそういう書き方をしています。この一月のブログへのすべての投稿をカット＆ペーストし、再編集や再構成をし、そしてそれを一通の電子メールの形式で送信するわけです。
あなたのサイトは何を扱っていますか？
Schneier on Security は……そうですね、セキュリティを扱っています。主に技術的なセキュリティ、そして経済や政治や心理学とセキュリティとの関わりについて書いています。私がこの分野で仕事を始めたコンピュータセキュリティや暗号法の話題が多いですが、テロリズムや犯罪などといった現実世界のセキュリティも取り上げています。投票機械、国民 ID カード、空港での乗客のプロファイリング、データベース、身分証明の盗難や偽造、安全に関する法律、そしてセキュリティが常にトレードオフであるという概念について書いています。
更新頻度はどれくらいですか？
ウェブログを始めた頃は、ウィークデイには少なくとも一度更新しました――更新は大抵朝でした。書くものをより多く見つけるようになるにつれ、更新頻度が変わりました。今では一日に二回更新していますし、十分なネタの在庫があれば一日に三回更新するときもあります。私は通常前もって、場合によっては数日分前もって投稿スケジュールを立てます。一日二回の投稿スケジュールを予約してから週単位の休暇に行ったりします。誰も私が出かけていることに気付きすらしないわけです。
アクセス数はどの程度ですか？
答えにくい質問ですね。統計情報を見ると、一日95,000人のユニークビジターがおり、一日あたり220,000のページニューです。RSS フィードがその中でトップで、およそ20,000です。そしてもちろん、125,000人もの人たちが Crypto-Gram で月に一度同じマテリアルを読んでいます。ブログの読者と Crypto-Gram の購読者は一部重複しているでしょうけど。
おお、多いですね。あなたは著述、講演、そしてブログによって政策立案者に意見が届いていると思いますか？
自分の書くものが誰に届いているか知りたいものです。私はたくさんのメールを受け取ります。ファンメールと私の書くものとは異なる見解による長文のよく考えられた意見の両方なので、私の文章を読み、それについて考えてくれる人たちがいるのは知っています。しかし、私の文章を読む人たちがどういうタイプかはあまり分かりません。多くの記者が私のブログを毎日読んでいるのは知っていますが、私のブログや Crypto-Gram よりも新聞の論説記事のほうが、多くの政策立案者に意見が届いているのではないかと私は睨んでいます。
Technorati のブログランクでは何位ですか？
通常120位台です。100位近くになっているのを見たことがありますが、一度きりでした。
ウェブサイトで収入を得ていますか？
少なくとも直接にはありません。セキュリティにフォーカスしているので、ブログや Crypto-Gram から広告で収入を得られるとは思いますが、その必要性を感じたことはまだありません。自分に職と俸給がある限り、広告を載せるのは避けたいと思っています。しかし、遅かれ早かれ屈服するかもしれませんが。
ただ私は講演、記事執筆、そしてコンサルタントをやって収入を得ています。そしてブログはそうしたものをすべてをサポートしています。
どのツールをお使いですか？ またその理由は？
Movable Type ですが、特に理由はありません。
あなたのウェブログが他のチャンスに結びついたことがありますか？
自分が為すことは何であれ、他のものをサポートします。ですので、何が何につながるか言うのは難しいわけです。私の仕事なのか、講演なのか、書籍なのか、エッセイなのか、そして論説記事、ブログ、そして Crypto-Gram なのか。あらゆるものはそれ以外のあらゆるものにつながるのだと私は思います。
リンクする記事はどのように選んでいますか？
私の興味を引く記事をリンクします。それが話題にしているのが、自分が書こうとしているものだからリンクする場合もあります。自分が書こうとしているものでないからリンクする場合もあります。一番好きなのは、セキュリティやセキュリティ技術について細かいところまで配慮された一般的な観点を説明するリンクです。私はしばしば、より一般的なセキュリティに関するエッセイを書く出発点としてニュース記事を利用します。そうする場合、その文脈で利用できる他のリンクを探します。
週に一度のイカに関するエントリ――あれを見つけるのは簡単です（訳注：Friday Squid Blogging のこと）。
訂正はどのように行いますか？
場合によります。単純な誤記なら、単に修正します。誤記を指摘するコメントの削除については気持ちが揺れます――修正を行ったら、それを指摘したコメントはもはや意味がないのではないか――が、今までのところそうしたコメントは残してきました。かなりの量の修正ないし追加がある場合、私はエントリの一番下に更新分を追加します。毎月 Crypto-Gram のためにエントリを編集する際、多くの修正、追加、そして更新を行います。
面白いリンクはどこで見つけるのでしょうか？
あらゆるところでリンクを見つけます。読者が私にメールしてくれるのが多いですね。自分が訪問するいろんなニュースサイトで見つける場合もあります。他のセキュリティ系ブログで見つける場合もあります。
何かウェブサーフィンの秘訣はありますか？
タブブラウズ。これがなくては一巻の終わりです。
一つのエントリを書くのにどれくらいの時間をかけますか？
書くのに一分かからないブログエントリもあります。リンク一つと、ことによるとコメント一言からなる短いエントリの場合です。エントリを書き、編集パスをすぐに済ませ、そして投稿スケジュールを決めます。投稿したいものにでくわすうちに、一日中それをやることもしばしばです。
長めのエッセイだと書くのに数日かかります。取り上げる話題は、ずっと考えてきたことの場合もあれば、いくつかのニュース記事が契機となることもあります。私は Forbes に毎月、Wired.com には隔週でコラムを担当しています――そして定期的に新聞の論説記事を執筆します――ので、そうした長めのエッセイは、ブログに投稿する前にそうした場に掲載されます。これらのエッセイには、下書き、書き直し、編集と長い時間を費やします。エッセイの下書きを他の人たちに送って読んでもらい、コメントをもらうこともしばしばです。
他のすべての出版社と、エッセイは彼らのところでまず最初に掲載し、そしてその後で私のブログにそれらを転載できるよう合意しています。なので、出版社のサイトにエッセイが掲載される数時間後にブログに投稿するようスケジュールを予約します。
わざと反応を誘発すべく書いたことはありますか？ そのやり方について何か助言はあります？
「これは間違いなくコミュニティから反応があるな」といった考えを持ってブログエントリを書いたことは一度もありません。私のエッセイは挑発的なこともありますが、決してわざとではありません。それに私が何年もかけて学んだのは、どのエントリが多くのコメントを生み、どのエントリがそうでないかは予測できないということです。
ブログはあなたがブログ以外で書くものに（Crypto-Gram 以外にも）影響を与えていますか？
ブロギングというのは、ハイパーテキスト的に思考することです。つまり、引用とリンクです。元のマテリアルを要約しなくてもいつでもそれから引用できるわけで、ある意味いい加減なものに思えます。私がブログを始める前、Crypto-Gram では元々、エントリの最後にリンク一覧を入れていたものです。テキストの中に直接リンクを埋め込むことができるとありがたい。Crypto-Gram のためにブログエントリを変換する際、私はテキスト中のリンクをすべて記事の一番下に移動します。テキストベースと HTML ベースの媒体の両方に同時に関わるのは面白いですね。
一日のうち何時間をオンラインで過ごしますか？
状況次第です。旅行中の場合、一日のうち一時間か、ことによるとそれ以下しかオンラインでないかもしれません。家にいる場合、一日中オンラインで過ごせます。日常的にネットを訪れているのは間違いありません。最近では私の仕事と社会的交流の多くがネット上で行われますし。
それは私が知る皆にあてはまります。どれくらい初期からインターネットにいましたか？ またどの時点でインターネットはあなたにとってコミュニケーション／配信ツールから変化し、社会的装置になりましたか？
私が最初に電子メールを取得したのは1987年ぐらいで、インターネットがコミュニケーション／配信ツールであるよりずっと前から社会的装置でしたよ。単純にクリティカルマスの問題です。友達がインターネットを使うようになるとすぐ、私は彼らと会話をするのにそれを使いました。そして徐々に変化が起こりました。1990年代の半ばのある時点で、自宅でパーティをやる際、紙の招待状を送るのを止め、電子メールだけを使うようになったのを覚えています。
ブログを書くのはいつですか？
可能なときはいつでもです。標準的な一日というのはありません。多くの場合旅行していたり、他にやる仕事を抱えています。ですから、できるときはいつでもブログを書くわけです。
フォローしているウェブログはいくつありますか？
およそ50です。もちろん、そのすべてを毎日見ているわけではありません。
新しいウェブログをどうやって見つけます？
新しいウェブログを見つけるには二通りあります。別のウェブログからのリンクを辿ってか、あるいは読者が私に教えてくれるかです。
ブログを読む場合、自分とは異なる意見を積極的に探しますか？
私は常にいろんな観点や意見を探すようにしています。そういうのにこそ面白いものがあるからです。私の場合、自分と意見の異なるだろうと思うものを読むことでそれを行います。
電子メールは何通受け取りますか？ それにすべて返事できますか？
インターネットの特性の一つに、普段の社会的文脈から離れて交流を行うことがあります。もし私が会合の場にいて、話したい人と会ったなら、私は彼がどういう状態か見ます。彼が他の人たちと群れていたら、私は彼と話をするのは後にするかもしれません。彼が仕事に没頭していたら、通りがかりに挨拶するかもしれません。彼が退屈しているように見えたら、彼と会話をしようと思う可能性が上がるでしょうね。
インターネットにはこの文脈が欠けています。誰かに電子メールを送るとき、あなたはそれを虚空に送ることになります。相手は忙しいだろうか？ 話したがっているだろうか？ 似たような電子メールを数十通も殺到してるだろうか？ あなたはそういうのを知ることができないのです。
私はたくさんの読者メールを受け取ります。その多くに投稿するものへの良質な提案を含みますので、全部を読むよう努めています。しかし、そのあまりにも多くに、意見、提案、推薦といった私の時間を割く要求があるんですね。どれも私と面識がないか、あるいはおそらくカンファレンスで一度か二度会ったことのある人たちからの善意から出たものなんですよ。個々に見れば、こうした電子メールはどれも筋の通った要求で、回答するのはまったく簡単です。多分どれも五分から十分しかかからないでしょう。でも、そういうのが一日数十通来るとなると……多過ぎますね。
それでも私は、忙しすぎて適切な回答ができないと言うだけであっても、全部に回答するよう努めています。
これまでに嫌がらせの電子メールやコメントを受け取ったことはありますか？ それにはどう対処していますか？
嫌がらせの電子メールは定期的に受け取ります。無視しますがね。そして嫌がらせのブログコメントを見かけた場合ですが――それが私に対する罵倒であれ、別のコメント主に対するものであれ――削除します。意見の相違は結構ですが、礼儀正しい対話を行うにはいくつか最低限の基準があります。
自分のサイトの更新が他のブログよりも満足のいくものである時期があります。あなたにとって最も満足のいく特定種類のエントリ、あるいは特定の日というのはありますか？
一行リンクのエントリよりも独立したエッセイの方が好きですね。そちらの方が書くのが面白いですし、満足度も高いです。
新たにブログを始める人に何かアドバイスはありますか？
実行あるのみ。退屈させるのではないかと恐れてはいけません。人の関心を引くのを恐れてはいけません。実行あるのみです。
書籍、映画、テレビ、そしてそれ以外のオフラインメディアについてですが――現在そうしたものに時間を取られていますか？
マスメディアはどうも得意じゃないんです。何ヶ月もテレビをつけてませんし――というか何年もテレビなしで過ごしていますし――映画にも滅多に行きません。書籍、雑誌、エッセイと読書はたくさんします。私は旅行が多いので、いろんな読み物があるのが好きです。後で読むためにインターネットから何かを印刷するのも珍しいことではありません。
ウェブログにおいて何があなたの関心を引きますか？
私がこれまで知らなかった優れた情報。
あなたのウェブログは人生を変えましたか？
私をコンピュータに縛り付けるものがまた増えただけです。
趣味は何ですか？
食べ物です。料理する方も食べる方も。妻と私は Minneapolis Star-Tribune やその他の出版物にレストランの批評を書いています。
あなたについて最も物語るものは何ですか？
このような質問に答えないという事実です。
使っているのは Mac ですか？ それとも PC ですか？
PC。Windows です。これについては読者からこっぴどく叱られるのですが、PC の方が私には使いやすいのです。政治的な声明のことだけを考えれば、ぜひとも Linux ユーザでありたいところです。しかし、私は自分の技術サポートはしませんし、学びたくありませんので、会社で使うものを使っているのです。
ご自分のサイトは読まれますか？
あらゆる種類の人たちが私のサイトを読みます。暗号やコンピュータセキュリティのおたくたち、国家安全に関心のある人たちなどです。私は一般のオーディエンスに向けて書いていますし、それこそ私が読もうと思うものです。