時期を同じくして刊行されたはてなの解説本二冊である。「はてなダイアリーガイドブック」は担当編集者より献本いただき(Wikiばな懇親会のときに近藤淳也さんからサインをいただいた)、「[はてな]ではじめるブログ生活」は近藤令子さんのサインとはてなのマスコット犬しなもんの肉球サインがほしかったので(笑)はてなポイントで購入させてもらった。
いずれにも株式会社はてなが監修者としてクレジットされており、、それぞれの著者である鈴木芳樹さんも水野貴明さんもはてなダイアリーを利用されているので内容的におかしなところはないのは当然として、両方とも分かりやすく書かれた本だと思った。
これは他の人も既に書いていることではあるが、「[はてな]ではじめるブログ生活」が初心者向け、「はてなダイアリーガイドブック」が中級者向けと大雑把に分けることができると思う。つまり、棲み分けはなされている。
まず「[はてな]ではじめるブログ生活」。タイトルに「ブログ生活」という言葉はあるが、はてなダイアリー以外の、人力検索はてな、はてなアンテナなどはてなが提供するサービスも網羅している。章の合間に挿入される近藤さんのインタビューもあり、企業としてのはてなのあり方を浮かび上がらせる内容になっている。
内容レベルは、一言で言えばはてなの入門書である。冒頭に「「はてな」に関する10の"はてな"」をもってくるなど、これからはてなダイアリーを始める層のための本であることが分かる。少なくとも既にはてなダイアリーを始めてそれなりに経つ人であれば、本書を必要とすることはないだろう。
本書の内容とあまり関係のない余談を二つ。まず124ページの近藤さんインタビューに登場する Wiki の説明文「複数のユーザが同じHTMLファイルを自由に更新、編集できるシステム。定められた記法で英単語を記述すると、特定の単語から同じ単語が含まれる別のHTMLファイルにリンクすることもできる」には、うーんと唸ってしまった。やはり Wiki って説明しにくいものだわな。
そして、83ページで数字付きリストの作り方の解説で、坂口安吾のエッセイベスト3として、1. 不良少年とキリスト、2. 日本文化史観、3. 文学のふるさと、と挙げているのに深い感動を覚えた(笑)。実は小生も坂口安吾のエッセイの中では、太宰治の死に際して書かれた「不良少年とキリスト」が一番好きだからである。
次に「はてなダイアリーガイドブック」であるが、これはなかなか「濃い」本である。「[はてな]ではじめるブログ生活」とは異なり、こちらは既にはてなダイアリーを利用している人が読む本である。百科事典的にも参照できる。
はてなダイアリーの機能についてはヘルプページがあるが、これだけでははてなダイアリーをフルに生かすのは難しいだろう。ひどいのになると、こうしたガイドブックを売りたいがために分かりにくくしているのかといった言いがかりをつける人がいるが、基本的にこうしたヘルプページをかっちり書こうとすれば、結果的に味気ない記述になるものだと思う。
そうした意味で本書は、技術的な詳細さと内容の網羅性と読みやすさ、分かりやすさを両立した本になっている。こちらは技術的な細部の記述からはてなダイアリーの全体像を浮かび上がらせる構造になっている。
よくここまで網羅したなと感心する一方で、個人的にはテーマ関係をあと一寸詳しく書いてほしかったとも思うが、これは当方の知識の足りないところがそれであるからで、その部分の記述が乏しいという意味ではない。
本書については、はてなダイアリー有料オプションの期間限定クーポンが付いているという利点があり、また担当編集者によるサポート日記が開設されているので、チェックするのもよいだろう。
ワタシ自身はてなダイアリーを利用しているが、それは更新履歴ページを移し、オールドスクールなウェブログスタイルでリニューアルするためだけであり、決して「ウェブ日記」ではない。ましてや「ブログ正統派」(笑)などではない。はてなを利用したのも、その当時 tDiary.net が新規募集を停止していたために過ぎなかったりする。
実際に使ってみるといろいろな楽しいところが分かり(そのいくつかは今回の二冊の中でも語られていることである)、また近藤さんの姿勢にも共感するところが多く、はてなのファンになったわけだが、一方で別にはてなダイアリーにこだわるつもりがないというのもこれまで書いてきた通りである。
今回の二冊、そして翔泳社から刊行予定の「はてなの本」という計三冊、はてなをメインに扱う書籍が刊行されるのは、はてなが提供するサービスが人を惹きつけているからに他ならない。それは素晴らしいことだと思う。しかし、その幸福な季節は長くは続かないだろう。「僕にとって「はてな」の運営は、ビジネスというよりは、使命に近いかもしれません」という近藤さんの言葉は、現実を前にいとも簡単に踏みにじられるのかもしれない。たとえそうであっても、今は何より近藤さんを応援したいというのが偽らざる気持ちである。