著者: Kevin Bedell
日本語訳: yomoyomo
以下の文章は、Kevin Bedell による Journalism's greatest hacker の日本語訳である。
本文中に名前が挙げられている Fear and Loathing in Las Vegas は、『ラスベガス★71』として邦訳がロッキング・オン社より刊行されている。
なお、最後に出てくる引用文は Fear and Loathing in Las Vegas に出てくるものではなく、そこでの弁護士のモデルだった Oscar Zeta Acosta の半自伝小説『The Autobiography of a Brown Buffalo』にトンプソンが寄せた序文に出てくるものだそうです。
ハンター・S・トンプソンは第一級のハッカーだった。技術的な意味でのハッカーではないにしろ、それでもやはり彼はハッカーであった。
トンプソンの職業はジャーナリズムだった。規則に従い、ジャーナリズムの養成学校で教わるように書こうとするかわりに、彼はジャーナリズム全体をハックすることを選んだ。
彼は既存の規則を捨て去り、独自のスタイルのジャーナリズムを発明した。それが彼が呼ぶところの「ゴンゾー・ジャーナリズム」である。彼の意図は、ニュースの中に自ら(ジャーナリストとして)身を投じることにあった。そして彼は、参加者の視点で読者にニュースを語ったのだ。
1960年代のサンフランシスコにおいて、彼はその時代と場所にあった文化に夢中になった――そしてそれは、彼の多くの仕事に反映されている。しかし、彼の最もよく知られている作品(Fear & Loathing in Las Vegas)の奥にあるものを読み取れば、彼の文字通りジャーナリズムを再発明しようという欲求が、大変多くの他の素晴らしい仕事につながったのが分かるだろう。
例えば、誰かにお金を払って南アメリカのどこかの人里離れたビーチにある密輸業者の村にボートで連れて行ってもらう場合。彼は少しの持ち物と重いタイプライターを抱え――土地の言葉を一言も話せないので――浅瀬を歩いて渡り、優れた記事をものにした。彼が書くには、彼らは人里離れた村に住んでいるにもかかわらず、みなロレックスをつけ、最上級のスコッチやラムを飲んでいた(密輸業者の戦利品である)。彼は彼らと時を過ごし、ストーリーの核心を突いた。そしてどういうわけか、彼らは彼の命を助け、解放してあげた。
彼はジャーナリズムが手を加えられるのを好まなかったので、規則をハックし、ジャーナリズムを彼が望むものに変えた。
Fear and Loathing in Las Vegas からの引用を借用させていただくと(Nat Friedman の今日の投稿より):
"There he goes. One of God's own prototypes. Some kind of high powered mutant never even considered for mass production. Too weird to live, and too rare to die."(「ヤツが帰っていく。神の試作品の一つ。大量生産するなど考えもつかないある種の強力な突然変異。生きるには型破り過ぎ、死ぬには稀有過ぎる」)
注記:彼を慕う人たちが意見を残せるようファンにより立てられたページがある。