コンピュータやインターネットは、我々の仕事、学習、そして交流のやり方を変えてきたが、それでもコンピュータやソフトウェアに対する不満が数多くある。独占ソフトウェアは、ますます高価に、メモリを食うようになっている。バグ、セキュリティ上の欠陥、そしてその他のエラーが、最も信頼性を要求されるプログラムにおいてさえ散見される。マイクロソフトによるオペレーティング・システム市場の独占支配により、イノベーションは息の根を止められている。多くのコンピュータ・システムは、新世紀の変わり目に対処できるように実装されておらず、何十億ドル分の難問と、世界的に電子装置が壊滅するという悲観的予測をうんでいる(訳注:2000年問題のことを指している。この論文が書かれた時点では、それは未来形の話だった)。
オープンソース・ソフトウェアと呼ばれる、既存のソフトウェア開発に代わる手法があり、これが上記の問題全部に対する非常に低コストな解決法を与えている。オープンソースは技術というよりは、むしろソフトウェア開発過程におけるこれまでと異なる考え方、組織化のあり方である。伝統的な独占ソフトウェア開発(我々が日常的に利用しているプログラムの殆どはこの手法でつくられてきた)が、出版産業と同様に知的所有権を厳しく保護する方針に固執するのに対して、オープンソース・ソフトウェア(OSS)開発は、インターネットとともに発展してきたずっと共同的な方式である。
オープンソース・ソフトウェアは、それ自体が自然に持つ信頼性、安全性、そして低コストという長所によって、いくつかの重要な分野において、市場におけるシェアを拡大している。だが、オープンソースはより幅広いレベルで同様に優位性を持っている。それは作業の重複から起こる経済的浪費を排除し、ソフトウェア産業において、司法省によるマイクロソフトに対する独占禁止裁判で目下調査されている競争排除的な商慣習などの、有害な独占権力に挑戦する手段を提供する。それは2000年問題に対するコスト効率の良い解決法をも提供する。以上の理由によって、オープンソース・ソフトウェアの利用が増加すれば、経済的利益は個人にとどまらず、公益をももたらす。
この論文は、オープンソース・ソフトウェアについて、その理念についての小史を含めて解説し、個人利用と公共利用の両方で利益となる生来の長所について論じ、政府がオープンソース・ソフトウェア開発を奨励すべき理由について解説し、それから政府が取るべき幾つかの方策を提案する。