Yahoo! JAPAN -- 俺はあんたらを愛し、憎む --


 職場の自分用のパソコンにおいて、僕はブラウザの起動時のいわゆる「ホームページ」設定を、Yahoo! JAPAN にしてある。

 その理由は、僕が Yahoo! に持っている安定感のイメージに負うところが大きい。トップページの画面構成は米国本家のそれを大体引き継いでいて、レイアウトが大幅に変わるということがない。会社でウェブアクセスするのは飽くまで仕事で必要な情報を収集するのが目的なのだから(ということにしておいてください)、落ち着いた画面は好感度が高い。何よりあのトップページは、長年親しんできたものだ。

 またアクセス速度の面でも一貫して安定しているので、起動時の描画速度を見ることで、その日のウェブアクセスの調子を大体推測できる。Yahoo! 自体が基本的にテキストベースで画面構成がシンプルな結果、読みこみが速いし。

 一時期ブラウザの「ホームページ」設定を自分のとこに合わせることで客を引っ張り…といったことがよく言われた。僕としてはそうした設定を変えることなく使っている(というか変えることができない)ユーザが多いというのが驚きだったのだが、未だにそうなのだろうか。

 利便性を考えれば、ブックマークファイルなりを指定しておくのが最良だろう。実際、常時接続はおろかテレホーダイも使えないというネアンデルタール期ネットワーク環境(涙)にある自室の PC のブラウザでは、ローカルファイルを起動時に指定している。


 前述の「ブラウザ起動時の設定」というのと併せて当時言われたのが「ポータルサイト」という言葉で、猫も杓子もウェブにおける玄関(portal)を目指したわけだが、それを最初にスマートに実現したのもやはり Yahoo! ではなかったか。

 僕自身一日に一度は Yahoo!ニュース でその日のニュースをチェックしているが、前述の通りここは表示がシンプルなので、WIRED のニュース記事など、こっちで読んだ方が読みやすかったりする。他にも出張その他で場所関係で調べたいときはブラウザを立ち上げ、地図情報に直行し、その後その日の天気を調べ…という風に文字通り Yahoo! を入り口にして一通り情報を揃えられる。休み時間には転職情報をぼんやり眺めて現実逃避したりもする。正に至れり尽せりである。

 僕の場合は職場での話だが、一般ユーザにとって Yahoo! といえば、今では何よりオークションであったり、掲示板サービスであったり、ショッピングであったりするのだろう(余談なのだが、僕はここで挙げた三つについて、利用はおろか閲覧したことすら殆どないという奇特な人間である)。


 Yahoo! が、David Filo と Jerry Yang という博士生二人による、自分達用のウェブの住所録を目的として始められたディレクトリサービスであることは有名である。その1994年当時の Yahoo! のトップページもウェブ上に保存されていたりするが、当時は彼ら二人が在学していたスタンフォード大学のサーバが利用されていた。そのサーバ自体は、http://akebono.stanford.edu/ に残っている。これを見るとサーバ名が相撲の横綱の名前に由来していることが分かるが(相撲ファンらしい Jerry Yang が付けたのかな?)、その曙も今年引退を発表した。う〜む、時は流れに身をまかせ(意味不明)。

 今回の文章を書くために Yahoo! の歴史を調べていると、ずっと昔のことを読んでいるような気がした次の瞬間に、こないだの出来事だと思っていたことが続いたりして何とも不思議な気分になる。Yahoo! JAPAN が設立されたのは1996年初頭で、サービスを開始したのはその年の四月である。これは僕が社会人になった月でもある。確かに卒論を書いていた頃、「Yahoo! JAPAN サービス開始」みたいな広告をパソコン雑誌で見かけた記憶があるのだが、Yahoo! JAPAN の歴史とワタシのサラリーマン人生が重なると言われてもピンと来ず、一方で呆然としてしまう。


 Yahoo! 本家の Company History のページに明記されている通り、Yahoo! はその歴史の初期において、Netscape Communications と緊密な関係を結んでいた。またこの二社が、ワールドワイドウェブ黎明期の時の利を得た二大企業なのは間違いない。しかしご存知の通り、Netscape はマイクロソフトとのブラウザ戦争に敗北した後、AOL に吸収合併されてしまった。一方 Yahoo! はポータルサイトへの脱皮に成功して現在に至っている。流れの速いこの業界のことだから、数年後には Yahoo! もなくなっている可能性がないとは言えないのが恐ろしいところだが、とにかく Yahoo! は二度目の成功を成し遂げた。

 しかし、である。未だに Netscape 4.x 系ブラウザを常用し、Yahoo! オークションを利用したこともないような時代遅れなワタシのような人間からすると、Yahoo! は未だに何よりまず「登録型検索サイトの雄」なのである。

 そしてその Yahoo! にサイト登録されることが、そのサイトの認知度を高める上で非常に重要であることは、個人サイトを運営される方なら誰でも肯いていただけるだろう。だが、YAMDAS Project は Yahoo! に登録されてない。勿論、こちらが登録を拒絶しているのではなく、拒絶しているのは奴サンどもの方だ。チクショー、悔しいぞ! というのが今回の文章の主眼なのです。すいません、毎度前置きが長くて。


 「アクセス数向上のためのノウハウ」を謳うサイトには必ず検索サイトへの登録の話が出てくるが、Yahoo! JAPAN に関して言えば、1998年7月の方針転換(「ヤフーは墓穴を掘っていませんか?」に詳しい)以後、個人サイトは極端に登録されにくくなっている。

 Yahoo! JAPAN が企業方針として登録サイトの質向上を図ったということなら、それは理に適っているとは思う。でも、それなら入り口が狭くなる前に登録されたサイトの再審査も行ってほしいところだ。これでは不況だからと新卒の採用を手控える代わりに使えない管理職を切れない日本企業みたいだ。Yahoo! にはこの例のようなしがらみはないはずだから、それをやらないのは手間を惜しんでいると言われても仕方ないだろう。

 ましてや、Yahoo! に登録されているユーザ自身が手間をかけて URL の変更手続きをしたところ、「登録されていないページの変更をしてくれてありがとう」という純粋に悪意に満ちたメッセージを表示するとは一体どういう了見をしているのだ、と問い正しくたくなる。


 かつてはこうではなかった。例えば結城浩さんによる「Webページを作る心がけ」の中の「Yahoo! JAPANへの登録について」の部分を読むと、(1996年当時の)Yahoo! JAPAN サーファー・チームが丁寧な確認作業を行なっているだけでなく、ウェブマスターを力づけるようなメールまで送っていることが分かるのだが、現在は登録拒否の通知すらない。

 それは現状では仕方ないだろうが、ちょっと気になることがある。先の文中で、結城さんのページで Yahoo! JAPAN に登録されているところを六つ挙げているが、一番の大本であるはずの「結城浩ホームページ」が現在登録されてないようなのだ。「結城浩」をキーワードに検索しても、Yahoo! ではヒットせず、その場合に検索が引き継がれる goo での検索結果しか表示されない(註釈:結城さんご自身からご指摘いただいたのだが、これは完全に筆者の調査不足でした。結城さんのトップページも、「プログラミングのエッセンス」としてC とC++ 言語のカテゴリに登録されてます。よって、以下の論旨にしても、一部成り立たないところがあります。これが筆者の責任であることを明記して、結城さんにお詫びします)。

 やゆよ記念財団への Cool Site 指定がいつのまにか外されたり、と妙なところがあるのは以前から知っていたが、そんな微調整をする暇があったら、Not Found サイト、墓場サイトを早く一掃しなさいと言いたくなる。

 とまあ、悪口を並べたが、Yahoo! JAPAN にしてみれば痛くも痒くもないだろう。書いてきた通り、Yahoo! JAPAN はもはやただの検索サイトではないからだ。広告収入などを基盤にしたビジネスモデルに則して考えれば、何よりもうまみがあり、そして必然的に力が入るのは、現実に客を引き寄せているオークションなどの方になるのは自然なことだ。それに審査を厳しくした後の登録サイトの質はそれなりのものになるのは確かだし、現状を悲しく思うのは全体からすればごく一部の人間だけだろう。


 で、その Yahoo! JAPAN への YAMDAS Project の登録であるが、過去三回試みてダメだったのでキッパリ諦め、現在に至っている。こういう過去を開陳するのはマヌケなのだが、これを読み気持ちが慰められるウェブマスターもいるかもしれないので正直に書いておく。

 最後に登録を試みたのは昨年の五月ぐらいだったと記憶しているが、そのときは幾らか自意識が肥大化していたようで、一月経っても通知が来ず、登録されないことを察したときにはガックリきて、当方の切なる想いを鼻であしらった Yahoo! サーファーを冷たい運動靴でピシャリとお見舞いしてやりたいくらい逆恨みした挙句、頼まれたって登録してやるかという心境に至った。まあ、向こうから頼みにくることなんて100年待ってもないでしょうが。

 先ほど「自意識が肥大」と書いたが、普段は僕自身自分のページの質も知名度もわきまえているつもりでいる。また、うちのサイトは内容的に一つの分野に特化してないので、適切なディレクトリを特定しにくいという、Yahoo! への登録を考えた場合致命的な性質を備えていることも承知している。

 うちのサイトの中では、Technical Knockout の認知度が一番高いのだろうが、それにしたってコラムと翻訳が両方あるし、他にもいろいろな種類の文章に手を伸ばしている。これは意図的なことで、飽きずにここまでやってこれたのは、この「手広さ」「緩さ」が大きいのだが。

 これは Yahoo! への登録とは関係なく言えることだと思うが、人気ウェブページをこれから作りたいなら、よほど面白い切り口を見つけることができなければ、一つの分野に特化して、狭くても深く濃いサイトを作り、固定客をがっちり掴むのが一番の近道だろう。


 もう登録はするつもりはないが、折角なので他の人が Yahoo! JAPAN のどのディレクトリに登録されているか調べてみた。それで自分との距離も逆算できるだろう。

 まずは山形浩生。何しろ当方は、2ちゃんねるの「山形浩生どうよ」スレッドで「プチ山形」の烙印をおされたことがある(とほほ…)。この人が登録されてるとこなら「プチ」の納まりもいいかと思って調べてみると、社会科学 > 経済学 > 経済評論だった。ここじゃ場違いだ。ここに YAMDAS が入るのでは、それこそラーメンカテゴリに札幌医科大学が入っているのと同じくらいの違和感がある。

 次に調べてみたのが Lepton さん。ウェブマスターの技術力にしても、ウェブページの知名度にしてもとても比べ物にはならないが、プログラマー、技術雑文書き、ラーメン好き、テキストベースのページを作っている、というように当方との共通点も多い。氏の場合、個人ホームページカテゴリだった。ここに新規に登録されるのは、もう無理なので参考にならない。残念。

 こうやって自分が好きなページが Yahoo! JAPAN のどのディレクトリに登録されているか調べるのもちょっと面白い。がんばれ!!ゲイツ君Show's Hot Corner といった超有名サイトがビジネスと経済 > ショッピングとサービス > コンピュータ > ソフトウェア > ビジネス > オフィスパック > マイクロソフト > 消費者の意見という尋常でなく深い階層、すなわち限定されたところに登録されているのを知ったりもする。


 そして驚くのが、筆者の巡回先になっている有名&良質サイトでも、Yahoo! JAPAN に登録されてないものが結構あったことだ。ブックマークの中から適当に検索しただけでも、

 といったところが未登録だったりする(僕の調べ方が悪いだけかも)。

 勿論この中には自主的に Yahoo! に登録しなかった人もいるだろう…というか、それだけかもしれない。しかし、そうだとしても忘れてはならないのは、Yahoo! JAPAN のポータルサイトへの拡張が必然だったように、ワールドワイドウェブ自体がもはや僕一人の趣味性・嗜好性の範囲で有名だとか良質だとか判断できないくらいに巨大なものになったという当たり前過ぎる現実である。先の階層の例ではないが、統計的に言えば、「がんばれ!!ゲイツ君」を知っている人間の方が少数派に違いないのだ。

 こうした健全なパースペクティブは、自分のサイトの価値を正当に評価するのには欠かせない。そこまで認識すれば、YAMDAS が Yahoo! に登録されなかったのも仕方ないかと思うわけだ。逆にそうしたところの力を借りずに認知度をここまで高めたと思えば、いくらか気分も晴れる…ということにしておこう。


[後記]:
 なんという展開だろう。サイト公開から約四年半、この文章を書いて約二年半経った2003年7月11日、Yahoo! JAPAN Surfer Team からメールが届いた。何と、YAMDAS Project を Yahoo! JAPAN のディレクトリに登録したいというのだ。この件については Death of a helpless disco dancer という文章で触れている


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初出公開: 2001年02月15日、 最終更新日: 2003年07月14日
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