なるほど・ザ・ワールドエンド
yomoyomo(技術者の端くれ、以下Y)と海坊主(医者の卵、以下海)の与太話。1999年6月6日電話にて。
海:おいっ、ちょっとこれ聴いてくれないか。(後ろで何かゴソゴソやっている。やがて背後で軽いポップが流れてくる)
Y:ん? ん? 何だそれ? 知らん曲みたいだけど。
Y:え・・・はあ!? 深田恭子!?
海:CDを買ってしまったね! 発売当日に。
Y:俺テレビでサビのとこしか聞いたことなかったよ。正直言って君との付き合いを考え直そうかと思うくらいだ。
海:待てよ待てよ。いや、でも友達にこのこと話すと皆「バッカじゃないの」って言うんだよ。
Y:改めて言わせてもらおう。バッカじゃないの!
海:アイドルの歌としてかなりうまいよ。歌唱力には評判があるんだって。
Y:そりゃ歌唱力がないって評判にはならねえよ。でも、深田恭子、いいんだけどさ。写真によっては SPEED のデブに似て見えるのがいかんな。あ、いかんいかん活字にするときは「SPEED のデブ」なんて書いちゃまずいな。ちゃんと「仁絵ちゃん」と書かないと。
海:ははは、まあ俺にも後ろめたさがあってね。発売当日買いに行って、「DANCE MANIA DELUX 3」も一緒に買ってカモフラージュにしてさ。
Y:尚更恥ずかしいわ! まあ、君が深田恭子にうつつを抜かしている間に来月世界は滅ぶ訳だ。
海:は? どういうこと?
Y:ほら、来月、七の月、ほら、ノストラダムス、大予言。
海:来月け?
Y:何だ忘れてたのか。来月だよ、1999年7月。いや、俺も今じゃ全く信じてないけどさ。
海:いやね、俺にとって1999年7月って遠い存在なんだよ、未だに。
Y:そうだろ、そうだろ! 1999年って俺達からすれば未だに「近未来」なんだよね。
海:そうそう、今年が99年であるのを今再確認したよ。
Y:欧米じゃね、ミレニアム、つまり千年期で盛り上がってるんだよね。日本じゃさほどでもないけど。今年に入って、十五年以上前に書かれたプリンスの「1999」がまたイギリスでヒットしたりしてね。
海:ああ、なるほどね。
Y:その曲も、世紀末を踊り明かそう、みたいな内容だけどさ、プリンスにしたってその曲書いたときは、1999年というのは近未来であって、自分が迎えるなんてあまり現実的に思ってなかっただろうね。そりゃあ生きていれば迎えることは頭で分かっていてもさ。
海:今でも「遠い先のこと」に思えるのにね・・・
Y:それでノストラダムスなんだけどさ、子どものころ学研の「6年の学習」だかで特集してあってさ。子どもってああいうの信じやすいじゃん。俺その当時思ったのが、世間の人も一般的にはその予言を信じている、と思ったんだ。
海:ああ、俺もそう思った。
Y:そうだったらさ、もし99年迎えたときにパニックになるんじゃないかってね。まあ、今は僕らも信じてないわけで、混乱もしないのだけど。
海:いや、予言の詳しい内容を実は俺、未だに分かってないからね。
Y:「恐怖の大王」が降ってくるんだとさ。
海:それで地球自体が滅ぶわけでしょ?
Y:て言うかね、どこにもそうは書いてないみたいだけど。「恐怖の大王」という訳自体間違ってるみたいなの。ただ珍しく奴の予言にしては年を指定してるから予め盛り上がったのだろうね。他のはただの「後だしジャンケン」だよ。
海:まあ何かしら起きる可能性はあるんだろうけど・・・俺基本的に信じてないわけじゃないんだけど。
Y:ほおーっ。でも本当に「きょーふのだいおー」って感じの奴が降ってきたら、俺はとっとと踏み潰されて死にたいよ。
海:でもさ、例えそうなったとしてもさ、死ぬときみんな一緒じゃん。まあそれならいいかな、と。
Y:なかなか危険な考えだねえ。
海:でもさ、自分だけ死ぬなんて嫌じゃん。
Y:人間いつかは皆一人で死ぬんだぞ。でもさ、あの予言をネタにして散々儲けた人間がいるんだからさ。まあ、予言が外れた暁には、そいつら全員廊下に正座させて説教したいね。連中はなんか理屈つけるだろうけど。
海:でもさあ、聖書の中に色んな暗号が含まれている、みたいな本があったよね。実はダイアナ妃の死も予言されていた、みたいな。俺実際読んでないから分からないけれど。
Y:うーん、ダイアナ妃ねえ・・・別にいいんだけどさあ・・・すっごく貧しいじゃん! もうちょっと重要なこと予言しろっての。
海:ははは、それもそうだ。
Y:まあ、そうこうしながら僕達は世紀末をだらだら過ごすわけだ。君は深田恭子を聴きながら99年を踊りあかすのかい?