2004年新春呆談
ベンジャミン(以下ベ)と yomoyomo(以下Y)の与太話。2004年1月1日の深夜、魚民にて。
Y:それでは、あけましておめでとうございます
ベ:あけまして、あけまして、おまん…
Y:あけまして、おまんこう?[註1] 僕も言った。君も言った、ということにするよ。
ベ:僕はそういうこと言う人間じゃないから、今、ものすごく照れくさかった。そういう単刀直入な――
Y:ほおぅ? ところで何度も言ってることだけど、このYAMDAS対談は、うちのサイトきっての人気コンテンツなわけよ。しかし、君はアルコールが入って、酔っ払わないとテープを回させないから、やるのが非常に難しい。一応、2004年一発目、新春呆談ということでよろしくお願いします
ベ:あけましておめでとうございます(乾杯)
Y:で、2004年はどういう風に迎えたんですか?
ベ:健康的な新年を迎えさせていただきました
Y:というと?
ベ:朝から初詣に、素敵な新年の幕開けを、すがすがしい気持ちで――
Y:もういいから先に進めよ!
ベ:朝の6時に、S神社に初詣に行ったわけ
Y:長崎市民はあそこに行くわな
ベ:浄土真宗の俺が。敬虔な仏教徒の俺が
Y:お前、敬虔な仏教徒なのか?
ベ:敬虔だよ、俺は。ブッタニスト? ブッダニスト?
Y:知るかよ。豚ニストでも何でもいいよ。まあ、俺も神社に初詣行くし
ベ:でも、君、敬虔なクリスチャンじゃないじゃない
Y:大きなお世話だよ
ベ:お清めをして、手を洗って、それからお賽銭をあげようとしたんだが小銭が106円しかない。もちろん札はあるんだが、1000円を入れる気にはなれなくて。しかし、106円というのはどうも縁起が悪い
Y:そうなのか?
ベ:小銭の中で一番の100円玉とご縁が良い5円玉で…消費税込みみたいな
Y:どこの世界に消費税込みで賽銭あげる奴がいるんだよ!
ベ:一分ぐらい、じっくりお参りさせてもらったよ
Y:周りに迷惑だよ。回転速いんだから
ベ:いや、6時ごろはピークも過ぎてたから。しかし、そうやってるとものすごく寒いわけ。気がつくと賽銭の隣で、巫女さんがテーブルでお神酒を振舞っててさ
Y:暖まりたいわな
ベ:もう一直線に向かったよ。一杯いただいたんだけど、すると巫女さんからお心だけと言われて。お盆があって、そこに小銭が――
Y:おう、君の心や。お心をあげなな
ベ:さっき105円使った。残りは…しかも、お盆には10円以上しかのってないんだよ
Y:そりゃそうだ。1円単位を出す奴がどこにいる
ベ:しかも、巫女さんがかわいくてさ…お参りしていただきありがとうございます、なんて言ってくれるわけよ。しかし、お神酒一杯に1000円は出せない。謝ったよ。すいません、今小銭が1円しかないもので…。しかし、巫女さんはお志で結構です、って言ってくれてね
Y:お前の図々しさに呆れてたんだよ
ベ:俺のお志って、低っ、って思った
Y:何せ1円だからな
ベ:恥ずかしかった。逃げるように巫女さん達の前から立ち去って、その後おみくじを引いて…でもバスがないものだから、帰れない。いっそのこと君を呼ぼうかと思った
Y:寝てたよ。あまりにも情けなくなってか?
ベ:寒いし、移動手段ないし
Y:何だ、俺を運転手代わりに使おうってか
ベ:もしくは……朝から飲むか! みたいな
Y:何で元旦の早朝からお前と飲むんだよ![註2]
ベ:ま、でも、それをやっちゃ去年までの俺と同じになっちゃうからそれはしなかったけど
Y:お前は飲んだくれ人生か。今年はどういう年にしたいんですか?
ベ:今年は……地味な幸せの年にしたいね
Y:結婚したいと言ってましたな
ベ:ああ、酔っ払うとね。ただ…告白して、付き合って、デート重ねて、プレゼント贈って……みたいなのをやろうという気持ちはないんだけどね。君はどういう年にいたいの?
Y:今年は少し落ち着いて勉強する年にしたい。真面目な話、本業はともかくとして、プライベートがウェブサイトを中心に回るようになってしまったというのがあって、そりゃ悲惨なことなんだ
ベ:危ないね
Y:それで翻訳なんかやると、もうそれ以外何もなくなっちゃう。ものすごい時間がかかるから
ベ:何しろ俺なんか、ウェブログとフロッグの違いが分からない人間だから
Y:そんなもんだよ
ベ:YAMDASの更新履歴の部分が変わった、というのは分かるけど。こういうのがウェブログかな、ということしか分からない
Y:ああ、まあ、ね。書いている内容は変わらないんだけど
ベ:また翻訳やるんだろ?
Y:いや、もう二度とやりたくない
ベ:その台詞は聞き飽きた(笑)。ほら最初の……えーっと……
Y:お前、名前ぐらい覚えていてくれよ
ベ:ほら、らせんの……
Y:らせんじゃねーよ。ホラー小説じゃねーんだから
ベ:ほら、八の字の……メビウスの環の本
Y:『Wiki Way』だよ。覚えておいてくれよ! お前の名前を訳者謝辞に載せてんだぜ
ベ:あんな厚い本の翻訳をやっていた君の状況を俺は見てたから
Y:あのときは……かなり危なかったからね
ベ:俺は別に被害を受けたわけじゃないんだけど、端から見ていて、もう止めてくれ、って思った
Y:そうそう、『Wiki Way』が終わって、二人で飲んでてさ、お互い酔っ払って、俺が気持ち良くなって、「もう一冊訳したいね」と言ったら、君が急に蒼ざめて、「止めろよぅ!」と怒鳴ったんだよね
ベ:あれはね……死ぬか、と思ったんだ
Y:そうそう、一番やばいときを見ているからね。やっぱり『Wiki Way』はすごく大変な時期にやったから。あれを訳すだけでも大変なのに、家族はとんでもない災厄に見舞われるわ、俺が勤めている会社はなくなるわという
ベ:一発目であの厚い本は……俺、あれの重量を報告したよな
Y:重量はともかく……『Wiki Way』の訳者あとがきはね、あれは遺書にしてもいいような内容なんだ。結果的にそうなっている
ベ:今度のやつ(訳者あとがき)は読み難いらしいね
Y:うん……お前、嫌なこと知ってるな
ベ:あれは陰謀だよ、読ませたくないという
Y:それについてはノーコメントとさせていただきます!(笑)
ベ:毎日コミュニケーションズ…毎日新聞…TBS…オウム真理教ビデオ事件…情報操作…印象操作を行ってるに違いない! あの蛍光色を遠くから見れば何か浮かび上がるのか?
Y:ああ、あれね、あれを5分間じっと見つめると、隠されたメッセージが浮かび上がるんだ[註3]。つーか、今回の本にも君の名前をクレジットしてるんだけど
ベ:まあ、あの蛍光色にしろって指示したの俺なんだから
Y:どうしてお前が装丁の指示をするんだよ! まあ、書籍の話はいいとして……
ベ:君も30、僕も30になった
Y:やっぱり結婚したいと思うんですか?
ベ:……うん。あー、恋愛過程はできれば、一ヶ月以内で終わらせたい
Y:お見合いしたら?
ベ:お見合いはしたくない。電撃的に結婚したいんだな
Y:ばーっと燃え上がってか? お前何歳なんだよ。女子高生みたいなこと言うね
ベ:ビビっと結婚したいわけ
Y:で、バリバリっと離婚か
ベ:奥菜恵も結婚したね。広末もしたし……まあ、奴らじゃ彼女達を幸せにはできないけど
Y:お前、何様だよ
ベ:でも、奥菜恵のダンナさん、俺達と同い年ぐらいだから
Y:そうそう、サイバーエージェントの社長ね。考えてみれば、俺達はイチローと同い年なんだよ。(ヤンキースの)松井は一つ下
ベ:向こうの方が、給与明細の0が1つ多いという
Y:1つじゃないよ、2つ、いや3つか[註4]
ベ:俺の給与明細は見難いからね。君の本のあとがきみたい
Y:お前、殴るぞ。まあ、同い年でも彼らのように夢を実現した人達もいれば、俺達のような底辺というか……
ベ:まあ、ピラミッドがあって。俺は底辺の端っこにいるわけ。で、見方を変えれば、実は俺は頂点にいるという
Y:……あん? どうして自分が端にいると思えるんだか。まったくお前は都合の良い切り口を探すな
ベ:今、ピラミッド、と言ったとき、自分が考古学者になりたかったのを思い出したよ
Y:他に子供の頃、何になりたかった、というのはある?
ベ:子供の頃、俺は自分が神童だと疑わなかったな
Y:お前の自信過剰は昔からだったのか
ベ:体育の授業なんかで一列になって体操とかやっていると、俺はここにいる人間じゃない! とか思ったりして、アラブの大富豪の息子なのが何かの拍子にここにいるのだと
Y:お前はハリー・ポッターか! まあ、子供の頃はそういう空想を抱いたりはするものだが、大体、お前の顔はどう見てもアラブじゃねーだろ
ベ:典型的な日本人なのにな。思考回路がおかしいところがあったんだね。何で俺が、ここにいるんだ、みたいな……まあ、それが今ではピラミッドの底辺の頂点に
Y:頂点じゃないっての。……まあ、こういうことを言うと怒るかもしんないんだけど、お互い敗残者なんだね
ベ:おい、新たな気持ちで新年を迎えている俺に対して失礼じゃないかい
Y:少なくとも二人とも落伍者だろ
ベ:「偉大なる落伍者」[註5]にはなれなかったが……
Y:僕は偉大なる落伍者になりたかった。だから(翻訳を)やったんだよ。やはり、何かを残したかった
ベ:あのな、落伍者、落伍者ってお前と一緒にするな
Y:そうそう同い年と言えば、自分が巡回先にしているウェブサイトの作者の人[註6]がいて、その人はウェブ日記ツールの開発者でもあって、『ウェブログ・ハンドブック』も献本させてもらったんだけど、実は大学の同級生だったんだな。それを知ったときは驚いたよ
ベ:思ったより、世界は狭いんだよ
Y:向こうは飛び級した秀才で、俺は劣等生という違いはあるんだけど、素晴らしいことだと思った。でね、9月に飲み会をやったときに、その人を「この人は同級生で」と山形浩生に紹介したら、山形さん、あー、という顔をされたんだよ。あー、こいつがあの対談相手なのか、と勘違いしてたわけ。俺はもう慌てて、「この方はあんな奴とは違いますから」と否定したんだけど
ベ:ほう、海坊主と勘違いしたのかな
Y:……お前だよ。もうそりゃ、やっきになって否定させてもらったよ
ベ:そりゃ、俺を上に置いて否定したわけだな
Y:……お前の自信過剰はまったく変わらんのだな。まあ、いろんな人が読んでる対談ということで
ベ:もうすぐ本になるらしいね
Y:(この野郎は)……君がもう少し協力的だったらね[註7]
ベ:前回の対談から半年ぐらい経っているのかな
Y:とりあえず今年は対談を何度かやりたいと思いますんでよろしくお願いします。いいですね?
ベ:ああ、俺 の 対 談、ね
Y:(こいつぶっ殺してやろうか)ほおぅ……まあ、今年もよろしくお願いします
[註1] 思えば5年前(ゲッ)の記念すべき第一回の始まりもこれだったんですね
[註2] そんなこと言いながら、元旦の夜に飲んでいるわけなのだが
[註3] 念のため書いておくが、ウソですよ
[註4] 考えてみれば、毎月給与明細もらうわけでもないことに気付かないくらいお互い酔っている
[註5] この言葉は何に由来するかは書くまでもなく……じゃあ、書かなければよいか。はい、書きません
[註6] 「今日のなんでやねん」のきたさんのこと
[註7] どんなにベンジャミンが協力的だろうが、絶対無理です