ネットの中立性

著者: Tim Berners-Lee

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Tim Berners-Lee による Neutrality of the Net の日本語訳である。


ネット中立性は国際的な問題である。一部の国では、他の国よりもそれが良い状態に処理されている(例えばフランスでは、レイヤーが分離されており、競争の結果、パリに住む同僚は月30ユーロで24Mb/sでネット接続し、無料国際通話付きの電話とデジタルテレビを手に入れている)。アメリカでは、ネットの中立性という概念が脅かされており、何をすべきか広範に議論されている。だからこそ、私はこの問題について何度も書き、講演しているにも関わらず、この問題について今ブログを書くのだ。

27年前、インターネットの発明者達[1]は、シンプルで大まかなアーキテクチャ[2]を設計した。どんなコンピュータも他のコンピュータにパケットを送ることができた。ネットワークがパケットの中身を覗き込むことはなかった。それがネット設計の透明性であり、レイヤーが厳密に独立していることであり、それによりインターネットが発展し、実用的になった。それにより、インターネットをサポートするハードウェアや通信技術が、速度が千倍上がることで発展できたし、今も同じアプリケーションを走らせられる。新しいインターネットアプリケーションが導入され、独自に発展できたのだ。

17年前にウェブを設計したとき、私は誰かに許可を求める必要はなかった[3]。新しいアプリケーションは、インターネットを修正することなく既存のインターネット上で動作した。当時私はウェブ技術も同様に普遍的で中立的なプラットフォームにすべく努力したし、今なお多くの人たちがそのために一生懸命働いている。ウェブが特定のハードウェア、ソフトウェア、基盤技術、言語、文化、能力的障害を差別したり、特定の種類のデータを差別することがあってはならない。

誰もが、私や Vint Cerf や ISP やケーブル会社やOSの供給者や政府やハードウェアベンダに許可を取らなくても、ウェブ上で新しいアプリケーションを構築できるのだ。

私やあなたがインタネットに接続する場合、我々の身分や我々がやることで差別されることなくどんなインターネットアプリケーションも走らせることができることが最も重要なのだ。我々は、それがあたかもパケットを魔法のように伝送する雲であるかのようにネット接続に料金を支払っている。サービス品質に応じて支払う料金は高かったり安かったりするかもしれない。ビデオや高品質のオーディオに適したサービスのためのお金を支払うかもしれない。しかし、我々は皆ネット接続にお金を支払ってはいるが、誰も私に独占的にアクセスをするためにお金を払うことはできない。

子どもの頃、ちょうど同じ切手代でイギリスのどこにでも手紙を送れるように、都会に住んでいようが山の中に住んでいようが、電話の取付費用がイギリスならどこでも同じ額であることに私は感動したものだ。

異なるサービスプロバイダ間を独自に相互接続するのを許可しながら、全体としてネットの中立性を保証する法律を実際に立案するのは困難な作業かもしれない。それはとても重要なことだ。アメリカは今それをすべきだし、それが唯一の道だと分かれば、インターネットプロバイダと他のレイヤーのビジネスとを経済的に分離することを必要とするくらい厳しくあるべきだ。

インターネットはますます我々を結びつける支配的な媒体になりつつある。中立的な通信媒体が我々の社会には欠かせない。それこそが公平な競争市場経済の基盤なのだ。それは、何をすべきか決定を行うコミュニティにより民主主義の基盤になる。それは、何が正しいか決定すべき人たちにより、科学の基盤になる。

ネットの中立性を守ろう。


  1. Vint Cerf、Bob Kahn と同僚達
  2. TCP と IP
  3. HTTP にポート80番を割り当てることをお願いする必要はあった
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初出公開: 2006年06月12日、 最終更新日: 2006年06月12日
著者: Tim Berners-Lee
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
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