政府がオープンソース運動を支援する、費用のかからない方法がいくつかある:
合衆国政府は世界最大のコンピュータ・ソフトウェア消費者なのだから、購買方針を定めることで、オープンソース・ソフトウェアの広範囲な利用と開発の維持を促進するだけの力量がある。多くの政府機関が OSS 製品が提供する付加的な信頼性や安全性から恩恵を受けるだけでなく、こうした製品に対する需要が増加することで、より多くの企業と個人プログラマーが、OSS 方式を取り入れることを促すことにもなる。この風潮は既に小規模なレベルで始まっている。例えば、米国郵政公社では、封筒に書かれた宛名をコンピュータを用いて読み出すのに Linux を高度に改造したバージョンを利用している。他の多くの機関も、競争相手である Windows NT ソフトウェアよりもかなり価格が手ごろなので、ネットワーク管理業務に Linux を利用している。特定の政府機関で OSS から受ける恩恵を評価するリスクのない方法は、議会が会計検査院に調査を開始させることだろう。その調査結果が、今後のソフトウェア調達に関するロードマップの役割を果たし得る。その調査では、以下の問題に取り組める:
もう一つ政府が取り得る行動は、政府や軍内で内部業務用に作られたソフトウェアの巨大な蓄積に関係したものである。パブリック・アクセスを許すために、機密扱いされないソースコードを集め、一連のレポジトリに集約することは、政府と国民の両方に恩恵をもたらす。企業や個人が、政府や軍のソフトウェア技術者の専門技術にアクセスし、既に解決されたソフトウェアの問題を解くのを未然に防ぐのだ。その上、政府機関で使用中のソフトウェアをいくつか改良するのに興味を持った個人や団体があれば、その政府機関は、納税者にコストをかけることなく、恩恵を得ることになる。
多くの機関が間違いなく、政府のソースコードを公開することについて、よく言われるようなセキュリティ上の危険を理由に反対するだろう。前述の通り、コンピュータ・セキュリティの専門家は、こうした意見を誤りだと考える。熱心な攻撃者なら、ソースコードがあろうがなかろうが、ソフトウェア内のセキュリティの欠陥を見つけ出すのは可能なので、ソースコードを隠すのは、実際にはソフトウェアを食い物にする人達よりも、セキュリティの欠陥を見つけ出し、修正し得る人達にとって一層邪魔になる。簡単に言えば、ソースコードを隠すと、これで大丈夫だという誤った感覚につながってしまう。ソースコードを一般に公開すれば、短い間不安かもしれないが、長い目で見ればソフトウェアの安全性はより高くなる。
こうした措置が、政府のシステムから2000年問題を排除することを目的とした、現在進行中の作業には必要である。なるだけ最近に開発された OSS を利用することで、2000年への準備が確実なものになり、また内部で開発されたソフトウェアのソースコードを公開することで、そのソフトウェアの些細なな修正により、2000年問題を解決するのが可能になる。こうした論点に、最近クリントン大統領によって設置された2000年委員会の注意を向けさせるべきである。
最後に、上で議論した通り、オープンソースとオープンな規格は同一歩調を取る。簡単に言えば、オープンな通信プロトコルや互換性を持つ規格は、OSS プロジェクトの基礎要素を成し、OSS 開発を容易にする。「OSS プロジェクトが多くのサーバ・アプリケーションに食い込めたのは、高度に共有化された単純なプロトコルが広く使われていたからである。」とマイクロソフトの Valloppillil は書いている。この文書で提案される、OSS に対抗する戦略としてはっきりと、「これらのプロトコルを拡張して新しいプロトコルを開発する」[23]と提案されていて、これはオープンな規格を独占的なものにすり替えることを示唆している。これは、反トラストの観点でも、具体的にはマイクロソフトが、OSS 開発を妨害する目的でプロトコルを支配しようとするのを防ぐためにも、政府が阻止すべき種類の略奪的なやり方であることは明らかである。政府は、標準化団体としての Internet Engineering Task Force(IETF)のように、業界で開発されたオープンな規格をもっと強力に支持すべきである。