著者: Ethan Cerami
日本語訳: yomoyomo
以下の文章は、Ethan Cerami による Back to the Memex の日本語訳である。
なお、引用されている Vannever Bush の文章に関しては、西垣通編著訳『思想としてのパソコン』(NTT出版)から引用した…が、二番目の文章の訳が脱漏しているのに気付いた(笑)。
最近、Vannever Bush が1945年に Atlantic Monthly に発表した論文『われわれが思考するごとく(As We May Think)』を再読する機会があった。もしまだ読まれたことがないなら、ご一読をお勧めするし、今なお実に考えさせられる論文である。Wired のサイトで、Vannever Bush の経歴を調べることもできる――Wired は、彼のことをインターネットの「ゴッドファーザー」と呼んでいる。
件の論文において、Bush は「Memex」という機械を描写している。以下にその記述を引用してみる。
Memex とは、個人が自分の本・記録・手紙類をたくわえ、また、それらを相当なスピードで柔軟に検索できるように機械化された装置である。Memex は、人の記憶を拡大し、詳細に補足するものなのだ。
Bush は次に続けて、今日存在するワールドワイドウェブによく似た機構を描写している。例えば、彼はドキュメント間の「経路」(ハイパーリンクにあたる)、経路の索引(Google にあたる)、そして論評のついた経路の公開(Blog にあたる)について述べている。
これまでのところ、我々は未だ Bush の独創的なビジョンを実現するに至っていないと私は思う。Bush の記述によれば、Memex により、あなたがこれまで読んだことのあるすべてのものを保持し、簡単にメモを加え、そうしたメモを有意義な研究にまとめられるわけだ。私自身文章を書き研究したところで言えば、これまで見たなかで最もこれに近いのは、Zoot という小さなシェアウェアアプリケーションである。Zoot により、ウェブページをコピー&ペーストし、手当たり次第にメモを追加し、そうしてすべてをより有意義なフォルダにまとめるのだ。そうすれば自分のアイデアを素早く検索できるし、フォルダをさらに再構成もできる。優れたツールなので、私は Zoot を強くお勧めする。
我々はウェブを飛び回り、検索を行う優れたツールを有しているが、情報のまとめ役に、我々が取り込むすべての情報の意味を理解する助けになってもらう必要性を強く未だ感じている。言い換えれば、我々は今なお Memex を求めているのだ。そして、誰かが Memex を作り上げてくれれば、間違いなく僕は真っ先にそれを買うだろうね。