2006年を占う

著者: Edward W. Felten

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Edward W. Felten による Predictions for 2006 の日本語訳である。

なお、冒頭で名前の挙がる Alex とは、Sony BMG rootkit 問題で大きな役割を果たし、WIRED NEWS で音楽業界のコピー制限技術と戦い続ける若き研究者と紹介された J. Alex Halderman のことである。


毎年一月、私はその年に起こることを予想してきた。今年は Alex と私が一緒に予想リストをまとめた。倍の数のブロガーが予想を行うので、予想の数も二倍にしようと思う。どの予想も少なくとも我々二人のどちらかが支持しているが、誤って紛れ込んだに違いない、間違っているのが自明な予想は除く。

それでは、2006年における我々の予想は以下の通り。

(1) DRM 技術は広範囲に及ぶ権利侵害を防ぎきれないままである。それと関連して、豚は空を飛べないままである。

(2) RIAA(全米レコード協会)は末端ユーザを相手取った訴訟をこっそり減らす。

(3) 著作権者は Grokster に対する勝訴が P2P の問題を解決しなかったことに気付き、P2P システムに対する攻撃を技術的なものに切り替える。

(4) 電子透かしベースの DRM がむなしい復活を遂げるが、それが根本的に解決にならないのに変わりはない。

(5) アップルの市場支配力に不満を募らせ、音楽産業はマイクロソフトに擦り寄ろうとする。マイクロソフトの市場支配力を恐れ、映画産業はワシントンに擦り寄ろうとする。

(6) Google Book Search に関する訴訟は和解する。その数ヶ月後には、みんないったい何にそんなに大騒ぎしたのか分からなくなる。

(7) 大きなセキュリティ、プライバシー脆弱性が、少なくとも一つ以上の主要な DRM システムから発見される。

(8) 著作権問題は、合衆国議会で膠着状態のままである。

(9) 技術面の国家競争力に関する議論が、ワシントンにおける政策論議においてますます力を増す。

(10) 計画的な非互換性が、業界の評論家により計画的陳腐化と結び付けて語られる。

(11) 特許制度を改正する必要があるということでは広範に合意するが、その改正の意義についてはほとんど合意が取れない。

(12) セキュリティ問題の関心がデスクトップ、つまりサイバー犯罪ツールのボットネットの役割に移る。

(13) インターネットは欠陥があるので再設計する必要があると主張するのがトレンドになる。このミームは、ろくでもない公共政策を薦める人たちに特に人気を博す。

(14) 無線プロバイダの「塀で囲まれた庭」の塀はますます弱くなる。プロバイダはどこが最初にそのネットワークを開放するかを気にして牽制しあう。

(15) プッシュ技術(PointCast や Windows Active Desktop を覚えてる?)が復活するが、今度はマルチメディアで、おそらく携帯機器で利用される。かつて好きでなかったのなら、やはり人々はそれを好まない。

(16) 放送局は無料テレビチャンネルのインターネットでの同時放送に乗り出す。ネットを介して認可されたビデオを配給するそれ以外の試みは期待を裏切る。

(17) 次世代 DVD と謳われる HD-DVD とブルーレイは、ますます次世代レーザーディスクの様相を強める。

(18) 「デジタルホーム」製品は、企業が消費者に彼らが本当にほしいものを進んで提供しないか、あるいは企業が消費者が本当にほしいものが分からないために完全に失敗する。

(19) 名の通ったデータベースベンダが、オープンソースとの競争に負けて倒産する。

(20) 二つ以上の著名なデスクトップアプリケーションが、(電子メールが Gmail でそうなったように)Ajax/サーバベースデザインに移行する。Office はそれにはあたらない。

(21) 各種ネットワークトラフィックの識別を妨げる技術が、Google や Yahoo などのアプリケーションサービスプロバイダに一部支持され、人気を得る。

(22) ソーシャルネットワーキングサービスは、本当に使えるものに脱皮する。

(23) 完全に仮想世界でおきた犯罪行為に対し、アメリカで重罪の有罪判決が下される。


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初出公開: 2006年01月10日、 最終更新日: 2006年04月12日
著者: Edward W. Felten
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
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