製品>戦略>ビジネスモデル

著者: Fred Wilson

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Fred Wilson による Product > Strategy > Business Model の日本語訳である。


起業家が犯す過ちの一つに、戦略を固める前にビジネスモデルに話を移してしまうというのがある。これについては、まず製品をちゃんとやり、それからその事業戦略を固め、その後でビジネスモデルを考え出すという考え方が私は好きだ。

製品をちゃんとやるというのは、しかるべき製品市場を見出すことだ。製品をローンチするだけではない。市場が製品を受け入れ、それをもっと欲しがるところまで達するということだ。その意味するところは消費者向け製品、SaaS、インフラ、ハードウェアなどで異なるが、いずれの場合も他の何かを考えるより前に、しかるべき製品市場を見出さなくてはならない。思うに、しかるべき製品市場を見出す前にビジネスモデルの話に移るのは、ビジネスにとって最悪なことかもしれない。

しかるべき製品市場を見出し、ビジネスモデルについて考え始めたら、一歩前線から引いて、明瞭で適格なビジネスの戦略を立てるのにチーム(と投資家)とともに取り組むことをお勧めする。投資家、少なくとも優れた投資家は、この段階でとても助けになる。昨日投稿した John Doerr のインタビューを見れば、(Intel、Amazon、Googleなどの)戦略についていろいろと彼が話すのを聞ける。最良のベンチャーキャピタルはとても戦略的だし、うまく機能する戦略もうまくいかない戦略も見てきているので、一緒に戦略を立てる優れたパートナーになりうる。これこそ自分が起業家と一緒にやるのが好きなことの一つだったりする。

2009年ごろの Twitter を思い出す。サービスは間違いなくしかるべき製品市場を見出していた。そこでチームは関心をビジネスモデルに向けた。有料アカウント、サブスクリプション、データビジネスなどいろんなアイデアについてあらゆる議論を行った。それと同時に Ev Williams は、Twitter を「人々が関心あることを見つけるのに利用する情報ネットワーク」にするという戦略を明確に述べていた。それには多くの情報ソースが Twitter に乗り、多くのユーザがそれにアクセスするようになる戦略が求められた。すべてはネットワークの規模次第だ。その戦略には、サービスを無料で来る人全員に開かれたものにし続けるビジネスモデルが求められた。それがプロモ型のビジネスモデル一式をもたらした(訳注:これはプロモトレンド(Promoted Trends)、プロモアカウント(Promoted Account)、プロモツイート(Promoted Tweets)の3つの広告製品を指している)。Twitterは、製品>戦略>ビジネスモデルをとてもうまく行ったのだ。

私は、多くの投資先企業が戦略的方向性にうまく合致しない収益モデルを組み立てるのも見てきた。明瞭な戦略的方向性をまったく持たない企業も一部にあった。それはチームや顧客ベースを築くのにエネルギーを浪費し、結局そのビジネスに有益ではなかった。我々はそうした失敗のためにチームが企業から逃げ出すのを見てきた。

この種の失敗は必ずしも致命的ではない。しかるべき製品市場を見出さないことこそ重大である。つまり、戦略やビジネスモデルで間違った道を進んでも、それは修正可能である。ただそれには痛みを伴うし、犠牲は大きいので、それが経営陣の変更につながる場合もある。

だから、まずしかるべき製品市場を見出し、それから歯切れ良く、明快で、賢いビジネス戦略を固めるのに時間をかけることなく焦ってビジネスモデルの話をするのはおやめなさいというのが私のアドバイスになる。製品と戦略が整ったところからビジネスモデルはごく自然に生まれ、成功に向かって進むことになるのだから。


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初出公開: 2013年06月13日、 最終更新日: 2013年06月13日
著者: Fred Wilson
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)

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