著者: Joel Spolsky
日本語訳: yomoyomo
以下の文章は、Joel Spolsky による The Wikipedia of Long Tail Programming Questions の日本語訳である。
Stack Overflowのサイトで特定の質問が繰り返しあがっていることにお気づきだろうか?
ほら、僕のPCが固まってるんです。SELECT *を使うべきでしょうか? とか。あと、どうやれば家からサーバをホストできますか? とか。
ホントみんな、これから十年こうした同じ質問に答え続けたいと思う? 65歳になっても? そんなの今だってあんまり嬉しくないよね?
我々はこの問題が起きることを、Stack Overflow を立ち上げる前から予測していたんだ。何故かって? 同じ問題が Usenet でもあったからなんだ。
次に以下のことがニュースグループで起こった。
Stack Overflow には何より記憶装置があるし、それに重複が流れるのを防ぐたくさんのメカニズムがある。我々は重複した質問がなされる前にそれを検知するよう努めている。完全に重複する質問をクローズする手段があり、既に両方の質問ともに質の高い回答がある場合は同じ内容の二つの質問をマージする手段があり、豊富な編集機能もある。
編集機能は時々見過ごされている。評価ポイントが100あれば、「コミュニティWiki(community wiki)」の印のついた投稿を編集できる。評価ポイントが2000あれば、何でも編集可能だ。
編集機能があるのは、古い質問/回答のペアをどんどんより良いものにできるようにするためだ。Stack Overflow で質問をして回答をもらう人一人につき、何百何千もの人が後でその対話を読むことになる。たとえ元の質問者がまともな回答をもらって立ち去ったとしても、その質問は残り、何十年も有効であり続けるかもしれないのだ。
これが Usenet やウェブベースのフォーラムとの根本的に違うところだ。Stack Overflow は単なる質問と回答の歴史的記録ではないということだ。それよりずっと意味のあるものである。つまり、範囲が狭く「ロングテール」な質問――Wikipedia にページができるほど重要ではないが、何度も繰り返し話題に上る質問――のコミュニティに編集される Wiki なのだ。
一般的な問題を反映する質問を見たら、ちょっと分かっただけで答えるのは止めよう。それはインターネットを少しもより良いものにしない。そうでなく、同じ質問のより一般的なバージョンである標準的な質問と回答のライブラリを作り上げる支援をし、その後ですべての完全に重複する質問のクローズに着手しよう。以下にいくつかガイドラインを示す。
既に他で回答されている質問には回答しない。いや、それで評価ポイントを数ポイント稼げるかもしれないけど、それでは君の回答は重複コンテンツになるわけで、インターネットを悪いものにしてしまう。何故か? その回答は今日は正しいかもしれないが、技術は変化するので、明日には正しくなくなってしまうかもしれない。Stack Overflow には既にほぼ間違いなく数千もの間違った事実が存在するが、これはそれが書かれたときは正しかったかもしれないが、もはやそうでなくなっているものだ。これらの事実はインターネットを何年も汚染することになる。我々が Stack Overflow を質問と回答がとめどなく流れる川にすることを許してしまうと、この問題は対処できなくなる。インターネットに公開するすべての情報を少なくとも適度に正確なものにするチャンスが我々にあるなら、Stack Overflow はもっと質問と回答の Wikipedia のようなものにならなくてはならないし、そこでの回答は一箇所で編集可能な標準的な答えになる。
もしユーザの質問を重複だとしてクローズするなら、それは本当に重複でないといけない。ユーザが「IPアドレス128.0.1.1/24ってどういう意味ですか?」と質問する場合、それは「a.b.c.d/e形式のIPアドレスはどういう意味ですか?」といったより一般的な質問の重複だとしてクローズするのは構わない。でも、27ページあるネットマスクのガイドと重複するとしてクローズするのはいけない。それでは「RTFM」と精神的に同じになる。Stack Overflow はリファレンスマニュアルのライブラリを目的とはしていない。何百万もの質問と回答からなる、リファレンスマニュアルと同じだけの情報を含むことを想定しているのだ。Google と組み合わせれば、Stack Overflow はあなたが決して読む必要はないリファレンスマニュアルのライブラリにある魔法の力を与えることになるのだ! それはまるで、図書館があり、その扉のところに魔法使いがいて、あなたが質問をすれば、本を読めと言われるかわりに本当の答えを得られるのだ!(腰抜かしてない?)
それが、どの質問にも表現や環境にバリエーションがある複数のバージョンがあるのを我々が気にしない理由だ。誰かが Google で質問を入力して、既に回答されている的確な質問を見つけるたびに、我々の仕事はよりよいものになる。
より一般的な内容になるよう質問を編集することは構わない。編集の力を利用して、誰かの自己中心的でとても特殊な質問をそれが何百もの人が遭遇するようなより一般的な質問になるようちょっと編集するわけだ。例えば、誰か「家でウェブサーバを立てたんですが、職場からアクセスできないんです」と質問していたら、その質問を「家で動かしているウェブサーバがインターネット上で閲覧できない場合、どういうことをチェックすべきでしょうか?」と書き直すのは構わない。実際、ときに「僕の宿題やってください」式の自己中心的で頭の悪い質問があっても、その回答がインターネット全般にとって極めて価値のある情報源を提供するようフォーム内で簡単に編集できるのだ。
標準的な回答からなる巨大ライブラリを作り上げる支援をしよう。Server Fault における mod_rewrite ルールの話であれ、Super User におけるコンピュータのフリーズの話であれ、あるいは HTML をパースする正規表現の使い方であれ、同じ形式の質問を見続けているのなら、それを他のできるだけ多くの人たちが優れたものにできるコミュニティ Wiki にするのだ。できるだけ広範なオーディエンスによって明快、正確かつ理解できるものを書くよう一生懸命努力することだ。
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