YAMDAS対談 第10回

そうさ僕らはおちこぼれ


 yomoyomo(技術者の端くれ、以下)とかっぱ(技術者兼ベーシスト、yomoyomo とは大学の同級生、以下)の与太話。1999年9月某日奈良のまぐろ専門店「まぐろ小屋」にて。


:君とは同じ大学の同じ研究室の出身なんだけどさ、君の Web ページに「大学に入ったはいいが周りがアブナイ奴らばっかりだった」みたいなこと書いてあったじゃない。情報工学科ってオタク系が多かったのかな。

:多かったよ! これは友達ができひんな、と思った。それで軽音に入ったんかな。大学時代も軽音はあんま楽しくなかったんだけど、友達はできたよ。

:当時はギタリストだったよな。ベースいつから始めたの?

:ベースは4回生の終わりぐらい。というかギターちゃんとやってなかったんだよな。卒業してからの方が練習するようになった。

:でも君のサイトにさ、これまでのバンド経歴をばーっといっぱい書いてるじゃない。

:ちょっと書き出してみようか、と思ったら結構な数になってん。そういえば今のバンドでね、10月に難波のライブハウスでライブやることになってん・・・でもそれがまた平日やねん。

:やっぱまた会社サボらないかんわけやな?

:いや課長が変わったんやな。今度はちゃんと言おうかな、と。

:バンドやってますから早く帰らして下さい、って?

:いや、課長もライブ見に来てくれるんやって。

:でも君会社の課長さんか誰かに「ステージで怪しいイッちゃった目をしてる」とか言われたんだろ?

:いやー、あれからね、ステージで笑う練習してるんよ。

:練習してどうするねん! ベーシストがヘラヘラ笑っててもヘンだぞ。

:まあね。顔のことでは気になったことがあってね。

:でもね、プレイしているときってね、すごくカッコ良く見える人もいるけど、すごく目つき悪く見える人もいるんだよ。色々だし、仕方ないよ。まあ、君は目がイッてる、というね。

:ちゃうねん、ちゃうねん! あれな、向こう(客席)暗いやん、こっち(ステージ)明るいやん。よく向こう見えんし、曲簡単やったから見んでも弾けたんよ。どこ見ようかな、誰かいるかなと見回してたら焦点が合わなかっただけ。


:そういえばねえ、昔の彼女に会いに行ったときにさ、(研究室の)H先生[註1]に会ったよ。

:へー、そうなんだ。何か話した?

:うーん、駅の向こうのホームだったんでね。お前何してん? ぐらい。

:そういえばさあ、(研究室の)F教授の訃報[註2]を俺ウェブで知ったんだよね。俺朝会社で朝日新聞をウェブで見るんだよ。訃報欄でF先生の名前見かけたときは椅子から転げ落ちそうになったわ。身体悪いというのは知ってたけど。

:うん、俺リクルーターで昨年大学に行ったんよ。そんときにF先生と喋ったんだけど・・・そのときにもう咳がひどくで喋るの辛そうやったもん。

:この間F先生追悼文集が届いたけどさ、君の文章が良かったねえ、素朴で。

:ハハハ、そうかあ? ああいう文章しか書けへんねん。

:だってさあ、最後の時期って俺なんか卒業発表の準備でかなり緊迫してたじゃない。君は最後の日まで卒業できるかどうか分からなかった[註3]んだからな!

:(卒研)発表はあんま緊張せんかったんよ。何でだろ? 「こんな感じですぅ」言うて笑われたの覚えてるわ。

:・・・あのなあ。でも君単位足らなかったよね。あれどうしたの?

:「計算機アーキテクチャ」の単位を取れてなくてね。そもそもね、テストの問題をも一回解いてこい、と言われてね、解いていってんけど、それも全然むちゃくちゃでね。

:お前なあ・・・

:そのとき答案持っていったときその日温泉旅行に行く予定でね、「今から温泉旅行に行くんですぅ」言うて・・・

:言うなよそんなこと!

:いや、言わんと帰してくれんやん。時間も迫っててね。すると先生答案見て、「うーん、温泉で考えてこい」言われてね。

:ハハハ。

:それで研究室の人に聞いて答案作ってもっていったんよ、今度はまあまあだったんだけど、それでも合格点には足らんかって結局マンツーマンで教えてもらった。よー分かったわ。

:特等席じゃねえか。他に大学の先生で記憶に残っている人っている?

:んー・・・ロシア語の先生かな。

:情報工学科行ってロシア語はねえだろ。

:ロシア語の試験でね、みんなカンニングするんよ。先生いっちゃん前の席に座っててさ、一番前の学生からやっとるんよ。先生が身体を動かすと、ダダダダダってみんな隠すんよ。それが面白かった。

:君大学で習ったことって覚えてる?

:覚えてへん。

:あっさり言うね。俺なんかしっかりやっておけば今もうちょっとでかい顔が出来たんだけど。

:何やっても分からんかったもんな。

:分からんかったな。俺達落ちこぼれ組だったんかな。

:落ちこぼれ組だね。

:当時しっかり習ったこと理解していたら、少なくとも今 Web ページなんか作ってないと思う。

:ハハハ、俺もソフトやれたらな、と思うね。ハード全然分からんもん。

:3年間やってそりゃなかろうや。

:そやろ? うちね、そっちも同じかもしれんけど教えてくれる人がおらんのよ。

:出来る人からすると、技術は教えてもらうもんではなく盗むものらしいけどさ。

:そのレベルまでいかへん。

:そう、聞かないと分からないし、でも何聞いていいか分からない。で分からない・・・という悪循環だね。

:これみよがしにばーっと質問するとさ、段々面倒臭がっているのが分かってね。止めとこうかな、と。人がいいかもな。

:それは違うような・・・うーん、こうして話すと二人とも変わってないんだなあ。


[註1] 我々が学生のときは講師だった。「俺をデバッガにするな!」と罵られながら卒論原稿をチェックしてもらい、二十数稿に至り「もう勘弁してくれ」という暖かい言葉でOKを出していただいたのも素晴らしい思い出だ。卒業後その卒論を見直してみると、二十数回チェックした文章の中に誤植があるのを見つけた・・・

[註2] 平成10年のある秋の日だった。合掌。

[註3] 折角だから追悼文集から引用しよう。「卒業判定会(こんな名前だったかな?)で助言してもらえるということで一緒に単位が不足した理由を考えてもらいました。結局、そんなに忙しくはなかったのですが、軽音楽部の活動が忙しかったということにしてもらい、その科目だったか忘れてしまいましたが再試験を受けさせてもらうことになり、おかげで無事卒業させて頂きました」つくづく正直な奴だ。


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初出公開: 1999年10月22日、 最終更新日: 2002年07月13日
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