After The Warm Jets


 友人とだべるうち、何故か話題がミルキーの話になった。友達が尋ねてきた。

ミルキーのポコちゃんペコちゃんって何人だろう?」
「日本人に決まってるよ」僕は即答した。
「そうか? どうして断言できるのさ」
「ネーミングだよ。男だからポコちゃん、女だからペコちゃん。これ日本語だよ」
「・・・言ってる意味が分かんないんだけど」
「だからぁ、男は突起してるだろ。だからポコちゃん。女性はその逆でペコちゃん」
「うーん? そうかなあ」
「そうだよ。だからチンポコっていうじゃないか」
「でもマンペコとは言わないぞ」
「うっ・・・」
「大体なあ、日本人でも子どもの名前に生殖器の呼び名を付けるやつがいるかよ!」


 以上の通り議論は僕の方の完敗に終わったが、「日本人でも子どもの名前に生殖器の名称を付ける」輩がいないわけではない。今や懐かし悪魔ちゃん騒動のとき、TBS のニュース23で、後に改名が認められた名前の例として「まんこ」というのが入っていたのを何故か鮮明に覚えている。。「この中にはテレビで発音できないものもありますが」と言っていた気がするが、画面に表示されてたのだから同じ事だろう。

 あとこれは書こうかどうしようか迷った余談であるが、筆者の中学時代の先輩に「ムツミ」という名前の人がいた。珍しくないって? 姓が「コンドウ」なんだぜ・・・

 親御さんももうちょっと考えろよ、と言いたくなる名前の例である。


 大体言葉にこだわり出すと碌なことはない。前回の文章で日本の広辞苑について触れたが、英語圏においては、アメリカのウェブスター、イギリスの OED(The Oxford English Dictionary)がそうした辞典の決定版としての役割を果たしている。特に後者の徹底的な初出至上主義(と勝手に命名してみたが、要は単語一つ一つについて語源まで溯って調査し、その単語がいつどこで現在の意味で使われたか詳細に解き明かすやり方)は素人考えでも無茶であり、実際、刊行時の編集主幹であった James A. H. Murray は35年間二度しか休暇を取らず早朝から深夜まで働き倒したにも関わらず、最終巻の出版まで命が持たなかった。


 何故そういう蘊蓄を垂れるかというと、実は特に意味はない。というか、前回の文章についてのリアクションについてまた言葉について色々考えさせられたのだ。「フリチン/フルチン論争」(なんじゃそりゃ)についてだが、フリは "free"、フルは "full" に由来するのではないか、という意見をいただき再び唸ってしまった。「振る」という動詞だろうとたかを括っていたが、まさか英単語が絡んでいたとは! 真相は未だ闇の中だが(白日に晒してどうなるというものでもないけど)、言葉そのものが文化であり、他の文化がそうであるように高踏・低俗併せ持つものであることを再確認させられた。

 また英語関係で思い出したのだが、「いやーん、課長さんエッチねえ」などという言葉をよく耳にするが(嘘付け!)、この「エッチ」は勿論「H」なのだが、僕はこれを何か英単語の略だと数年前まで思ってたんですな。「変態」の頭文字(?)で、これを言い出したのが明石家さんまであると聞いたときには何だか脱力してしまった。


 あと、「あげまん」についても批判をいただいた。

「確かにあげまんのまんは「まんなおし」からきてるんだろうけど、まんこのまんだって同じ由来かもしれんじゃないか。お前の文章はそっちの検証が足らない。それでは信頼に足る意見として読むことが出来ない」とのことである。

 ごもっとも。思わず前のめりで道端の溝に頭から突っ込んでしまった。溜まったものを抜くのと違い、肩の力を抜いた文章を書くのも大変だ。

 とりあえず男性生殖器の呼称別の意味の解析は当方が詳細にやったので、「まんこ」を初めとする女性生殖器の呼称については誰か女性の方が真面目にやってもらえないものだろうか。

 とどのつまり、この世の人間はオスとメスに分けられるのだから。

 それは、企業が「勝ち組」と「負け組」に分けられることより、

 おもちゃが「こどものおもちゃ」と「大人のおもちゃ」に分けられることより、

 椅子が「スケベいす」と「スケベいすでない椅子」に分けられることより確かな事実なのだから。


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初出公開: 1999年05月03日、 最終更新日: 1999年12月26日
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