クリエイティブ・コモンズとWeb 2.0

著者: Lawrence Lessig

日本語訳: yomoyomo


以下の文章は、Lawrence Lessig による CC & Web 2.0 の日本語訳である。

本文章は、「クリエイティブ・コモンズの価値」の続きである。また C-Shirt のコンセプトについては、鈴木健氏の「Cシャツ、その可能性の中心」が特に参考になる。


クリエイティブ・コモンズは Web 2.0 のツールである:法的、並びに技術的の両方の意味で、ウェブユーザが望むように創造性を生み出し、共有することを可能にするプロトコルなのだ。

さもないと、少なくともクリエイティブ・コモンズはハイプということになる。実際にはどのような成果をあげているのだろうか? CC は実際その集合に何を加えているのだろう?

私がつい2ヶ月前にデモを見た日本発の例を紹介しよう。CC-JP のメンバーが、それぞれデザインが微妙に異なる美しいTシャツを着てカンファレンスの会場を歩き回っていたのだ。どのシャツも一番下のところに CC ライセンスのアイコンがついていた。シャツの左袖には二次元コードがあった――これは日本で一般的な二次元のバーコードで、日本の(ほとんどの)携帯電話はそれを読み取り、URL に変換できる。

私は分かりきった質問をした。「これらのコードは何をするの?」

そうしたシャツが「C-shirt」という新プロジェクトの一部であることを教えてもらった。C-shirt は、日本の三つのサイトがきっかけとなったものである。この三つのサイトを説明すれば、それらが C-shirt のためにどのように連携しているかお分かりになるだろう。

第一のサイトが一番分かりやすい。フォト蔵Flickr によく似た写真サイトである。画像は、写真が撮影された場所情報を含め、CC ライセンスを付け、タグ付けし、そしてカテゴリで分類できる。だから、フォト蔵から他の場所に画像を移動――CC ライセンスを維持したまま――し、修正することも可能である。

画像が移動可能な場所の一つが二番目のサイトである Willustrator だ。Willustrator はオンライン描画ツールである。神原啓介により開発されたこのツールは、デフォルトで新規イラストに CC ライセンスを組み込む。それはつまり、このサイトにあるイラスト集は、ユーザがどのようにでも好きなように再利用、リミックス可能ということだ。このサイトは、ベジエ曲線の描画を含む、非凡な描画ツールを提供している。そしてこれらのツールにより、誰もが画像を描き、そしてそれを他の人と共有するか、あるいは画像を別のアプリケーションに移動するかできるわけだ。

つまり Willustrator は「真の共有」サイトであり、人々が作成したものを Willustrator のサイトから移動できるよう作られている――その先はブログ上であったり、レポートの中であったり、もっと興味深いのは、私がその日デモを見た三番目のサイト――Nota である。

Nota は私が見てきた中で最も非凡なウェブページ作成技術である。Nota も、CC ライセンスの資産を利用することで、クリエイティブ・コモンズのライセンスを足場にしている。そして Nota は驚くべき WYSIWYG のウェブ編集機能を提供している。大きなホワイトボードがあり、マーカーや写真が壁にはられたホワイトボードを「編集」したいように「編集」可能な大きなホワイトボードを考えていただきたい。Nota の中ならば、フォト蔵から写真を、あるいは Willustrator からイラストを取得し、そして両方をウェブページ上にインポートできる。描画ツールを利用すれば、重要なテキストには下線を引ける。あるいは背景に画像や写真を加え、そのページの全体の見た目を変えることもできる。それから1クリックでウェブページが作成される――ユーザが選択すればやはり CC ライセンスが指定され、即座にウェブで利用しやすくなる。

以上三つのサイトがお互いを足場としている。C-shirt はその完璧な実例である。

C-shirt を着た友人を通りで見たと想像していただきたい。携帯電話でシャツの袖の二次元コードの写真を撮れば、その画像がある Nota のページの URL が分かるのだ。

その Nota のページでは、自分用にTシャツのコピーを購入できるし、あるいはそのデザインを修正することもできる。例えば Nota を使い、シャツの絵柄をレイアウトし、Willlustrator でそのデザインを編集し、そしてフォト蔵からデザインに追加するソース画像をインポートできる。作業が終了すれば、その後 Nota のサイトでTシャツが作られ、自分宛てに送れるようになる。更には、その自分用のデザインを他の人たちが購入したり、自分に合うように修正できるよう設定できる。つまり、ボタンをクリックすれば、シャツが作られ、あなたのところに送られてくる。さらにクリックして、自分のオンラインストアを開くこともできる。

C-shirt はまだアルファ版である。私が見たときはできて三週間しか経ってなかったが、CC 指定されたサイトが公開していたコンポーネントをそのまま足場にしていたので、そのときでさえ C-shirt は既に機能していた。

C-shirt が重要なのは、それがヴェルサーチに取って代わるからではない。そうでなく、我々が Web 2.0 の原則をコンテンツ層に拡張する可能性を示しているからこそ C-shirt は重要なのだ。

これまでのところ、Web 2.0 まわりの興奮の多くは、容易に交流し合うのを可能にするモジュール技術に関するものだった。CC は容易に交流し合うのを可能にするモジュールコンテンツの構築を容易にする。創造のコミュニティは、このようにコンポーネントがこうした共同作業を明確にひきつけるようになって実現可能になる。

これが CC の重要な狙いの一つである:ウェブにおける多様な創造的なプロジェクトが交流し合うのに必要な自由を実現する、コンテンツ層における単純で、フリーで、しかも伸張性のあるインフラの構築である。

次週もこうした例をさらに紹介する予定である(あと C-shirt の正式立ち上げがあったらお知らせするよ!)。


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初出公開: 2006年11月06日、 最終更新日: 2007年05月20日
著者: Lawrence Lessig
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
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