少し前に、著名なパロディサイト Onion の "CIA Asks Bush To Discontinue Blog" という記事を翻訳して期間限定で公開したところ、やじうまWatchをはじめいろんなところで取り上げられ驚いたことがあった。
……という書き方は実は正しくない。件の記事を八木の野郎に教えてもらい、翻訳しようと決めた時点で、これは絶対受けるという確信があったからだ。
良い文章が書けた! と自信を持って公開したものが期待したほど話題にならずにがっくりくることが多かったりするのだが、一方で、ムダに長くウェブサイトをやっていると、「話題になる」、「受ける」コンテンツというのは公開前に大体分かる。今回もそうだった。
しかし予想できなかったこともある。件の Onion の記事を事実だと信じた(と思しき)人が多かったことである。ワタシがざっと調べただけでも、10近くのサイトが騙されていた(ように見えた)。やじうまWatchでの紹介が紛らわしかったというのもあるかもしれないが、それだってリンクを辿ってワタシの紹介文をちゃんと読めば、気がつかないわけはなかろう。そういうのをあっさり鵜呑みにする人たちが、同じブログで「メディアリテラシー」だの「ジャーナリズム」だのについてご高説を垂れているのを見ると、なんか笑ってしまうのだが。
この件でも再確認したのは、「海外のサイトで見つけたネタの並行輸入」が人気ブログとやらを作る早道だということ。これについては加野瀬未友さんも「人気blogの作り方を考えて実践した人」にズバリ書いていた通りである。
最近では、どこぞの商業サイトでも海外のブログの受け売りだけでいっぱしの評論家気取りというのもいたりするが、そういうしょうもないのはともかく、加野瀬さんの文章にも名前が挙がるABC(アメリカン・バカコメディ)振興会や海外ボツ!Newsは、そのサイト作者の興味が上のメソッドに結果的に合致した好例だし、だからこそ面白く(ワタシも好きだ)、人気サイトになっているのだと思う。
さて、ブログを始めるからにはそれを人気ブログにしたいと強く願う人もいるだろう。海外サイトからの並行輸入が人気ブログを作る近道だということは分かった、英語だって読むぐらいはなんとかなる、しかし具体的に作るとなるとどういうサイトにしようか途方に暮れる人もいるかもしれない。自分に秀でたスキル、詳しいジャンルが思いつかない場合は特に。例えば、X51.ORG が好きだからといってそれをそのまま手本にしたのでは、結局扱うネタは同じになっちゃう。そうでなくても、ABC振興会と海外ボツ!Newsでときどきネタがかぶっているのを見ると、他で扱ってないネタを選んでくる自信がなくなるのもよく分かる。
そこで不肖ワタクシめが、その辺りの問題を一挙に解決し、まず確実に人気ブログになること間違いなしのアイデアをこっそり伝授させていただこう。
それは blogdex 日本版である。
といってもばるぼらさんによるかつての blogdex-JP や、現在であればいしなおさんの blogmap のような同種の集計システムという意味ではなく、まさに blogdex についてのブログという意味だ。つまり、blogdex の上位×個を紹介・解説する、というようにフォーマットを決め、それを毎日続けるのだ。
なんだそんなものかと思われるかもしれないが、百式の田口さんも、これを作れば絶対人気サイトになるのにと力説していたものだったりする。
どうして blogdex 日本版が人気サイトになること確実なのか。それは、blogdex 日本版が、多くのブロガーにとっての元ネタ提供サイトになるに違いないからだ。
上に書いたことを突き詰め、なおかつ口を悪く書くと、(一部の)ブロガーは拝外主義で、そしてなんだかんだ言って権威が好きなところがある。blogdex などそうした意味で、ブロガーにとっての最適の権威だろう。
人気サイトを作る一番の正統的な方法は、言うまでもなく質の高い(おもしろい)コンテンツを公開することである。しかしそれは誰にもできることじゃない。本当に面白いことが書ける人は間違いなく限られる。
そこで発想の転換である。質の高い(と思われる)コンテンツを紹介するブログを作れば、受け売りだって文句は言われない。blogdex 日本版なら、少なくとも「とりあえず巡回先に押さえておいて損のないブログ」程度には最初から認知されるだろう。そこまで認知させるのに苦労しているブログも多いのだから、大きな先行ポイントではないか。
blogdex 日本版を作れば、その作成者にもいろんなメリットがある。
まず海外のブロガーのミームを掴むことができる。これが一番大きいのだが、blogdex は純粋に被リンク数で順位が決まるから、New York Times あたりの真面目な政治記事、ブログ界で一番話題になっている新技術についてのページ、はたまたマトリックス・ピンポンのような面白コンテンツにいたるまで、内容的に多岐にわたるコンテンツに触れることができる。自分の興味を広げるのにも役立つし、雑談のネタには困らないだろう(そうした意味で、百式の田口さんが力説したのも納得である)。
もちろんウェブにおいて一番活きが良いコンテンツを相手にするわけだから、生きた英語とやらを多く自ずと読むことになり、英語の実践的な勉強にもなる。常に一定量の英語を読むだけでも自信につながるだろう。
そして、件のネタかぶりの問題がなくなる。正確に書けば、ネタがどこかとかぶるのを心配する必要がなくなる。だって、自分は準拠枠に従っているだけなんだから。blogdex に先んじて紹介しているブログを見つけることも稀にあるかもしれないが、それが良く書けているなら、そのエントリを紹介して解説の代わりにする余裕を見せたってよい。
それに一つ定点観測をする地点を定めれば巡回先を絞ることができる、自ずとサイトに旬のキーワードが集まることになり、特に意識しなくても検索エンジン経由の閲覧者が見込めるなど、利点はいくつでも挙げられる。
当然ながら、これだって誰にでもできるモノではない。一定の英語力は最低でも必要になるし、いくら素材が目の前にあるとはいえ、それを面白く伝えられるかは、作成者の文章力・構成力にかかっている。結論としては、この手の話においても銀の弾は存在しないということなのだが、ブログ作りのヒントぐらいにはなったのではないか。
さて、そんなに確実なら、お前がやったらどうだと思われる方もいるかもしれない。実際ワタシも何度か(yomoyomoという名前を出さずに)やったろうかいと考えたことはある。もう少しワタシが若く、馬力があった頃なら本当に始めていたかもしれない。しかし、残念なことに毎日それを続けるだけの根気と体力が今のワタシにはない。こういうサイトは継続してこそ意味がある種類のものだしね。
そしてワタシの場合、他人の仕事の紹介というのでは、翻訳もやっているからそれで気が済んでいるところがある。また人の仕事を取り上げるよりも、人から言及されるような質の高い文章を書きたいという意欲を失っていないというのもある。自分にも素晴らしい文章が書けるのではないかという悪しき野心を未だに捨てきれていないのである。