OSI による APSL の解説

著者: Eric S. Raymond

日本語訳: yomoyomo、山形浩生


以下の文章は、Eric S. Raymond による、OSI clarifies the status of the APSL の日本語訳である。

この文章は、Bruce Perens 他が APSL 1.0 について発表した文章に関する反論として書かれたもので、OSI の公式見解である。

本翻訳文書に関しては、山形浩生氏から誤訳の指摘を受け、タイトル・文体も含め訳文を抜本的に改版し、訳者に氏の名前を加えた。


今日(1999年3月16日)未明、Bruce Perens、Wichert Akkerman、そして Ian Jackson の三名が、「Apple Public Source License に関する我々の考え」と題された公開書簡を出した。その中で、オープンソース・イニシアティブ(以下 OSI)は、オープンソースの定義に適合しない APSL に誤ってお墨付きを与えてしまったと主張している。

その公開書簡において、OSI の立場が完全に誤解されている。つまり、ライセンスや、適用される判例法や成文法に関して誤読が見られる。

まず第一に、2.2 節 (c)「報告の必要」に関する問題として、前記の公開書簡では、アップル社が消滅した場合に、オープンソース開発者がこの節に従うことが不可能となり、その結果として開発者たちの権利も消えてしまうというシナリオが示唆されている。しかし、この公開書簡は 13.6 節の断絶条項を無視している。もしアップル社がなくなった場合には、2.2 節 (c) は実質的に、執行が不可能となり、従って 13.6 節に基づいてこの部分は無効となり、ライセンスのそれ以外の部分はそのまま残る。

第二に、9.1 節に関しては、Jikes の特許条項と APSL を同一視するという単純な間違いをおかしている。これを示すため、「Affected Original Code」に関する制限に注意してみる。我々はこの点についてアップル社と詳細にわたり議論した。アップル社は、(Jikes のライセンスにおける)「オリジナルなソースコード」全体を開発者から引き上げる権利を保持するのではなく、特許権侵害に直接抵触する一部のソースコードに関してのみ保持する。

この「特許権侵害に直接抵触する一部のソースコード」というのは、アップル社が関わっていないときに特許権侵害によってオープンソース開発者たちが使用を止めなくてはならない、まさにその部分を指している。この条項は、単にアップル社の法的責任を述べたものでしかない。この条項があることで、オープンソース開発者たちにとっては、アメリカ合衆国の特許権法のもとでこの条項がない場合と比べても、なんら余計な法的責任を負わされる可能性が増すものではない。

OSI は、「エリック・レイモンドは APSL を向い入れようと余りにも性急に飛び込んだ・・・」という暗に示された主張を否定する。OSI 会議は、APSL が公のされる以前に、アップル社に対し重要な変更を要求し、そして実際「勝ち取って」いる。それを受けて OSI 会議は、OSI を代表してエリックが公的に APSL を是認する権利を持つことを満場一致で採択した。

OSI は、その是認を支持するし、アップル社のビジョンを拍手喝采し、そして自信を持って APSL という言葉が他のアップル社の技術のオープンソース化のモデルとしての役割を果たすことを期待するし、もしかすると、実際のところその跳躍の第一歩から、他のコンピュータ・システムの製造者によるオペレーティング・システムのオープンソース化のモデルの役割を果たすかもしれないのだ。


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初出公開: 1999年04月08日、 最終更新日: 2000年07月26日
著者: Eric S. Raymond
日本語訳: yomoyomo (E-mail: ymgrtq at yamdas dot org)
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