番長を巡る泥酔鼎談
ベンジャミン(アンチ巨人の清原ファン、以下ベ)、yomoyomo(情熱が薄れてしまった巨人ファン、以下Y)と海坊主(アンチ巨人でアンチ清原、以下海)の与太話。2000年8月6日長崎の居酒屋「魚民」にて。
注記:本鼎談は2000年8月初旬に清原が劇的な復帰を成し遂げた少し後に行なわれたものである。また、三人ともしこたま酒を飲んでおり、かなり非論理的なことを口走っているところもあるが(ベンジャミン、お前だ!)、特定選手、監督を侮辱する意図はない。畢竟酔っ払いの与太話ということだ。
Y:で、どうよ清原は。復帰後の成績はどんなもんだい。やはり(清原ファンとしては)嬉しかったかい?
ベ:まあこんなもんだろう、二週間は、という感じだね。
Y:で、その後は下り坂ということかい?
ベ:ちゅうかこのまま上りっぱなしじゃまずいだろう。松井の立場は? 高橋の立場は? となるわけ。清原がこのまま活躍し続けて、主役になったらどうするよ。
Y:別に立場で打っているわけじゃないんだから。
ベ:でもね、清原と松井の違いって分かる? 松井は同情されるわけ。その証拠にさ、彼への非難の意見って少ないわけ。それに対して清原はいいときも悪いときも極端に言われるからさ。六本木の帝王とか、種馬とか、ひどいだろう。
Y:確かに松井の方が、暖かくみる空気が強いわな。
ベ:清原がいないほうがベンチの雰囲気がいい、とか巨人ファンが言うわけよ。仲良しクラブじゃあないんだから。
Y:そんなこと言うかね? まあ、巨人とそのファンというのが日本的な構造を象徴しているというのはあるだろうけど。
海:(唐突に)俺さ、清原も桑田も嫌いなんだよ! 結果見てみろよ、清原が巨人に来てから活躍した年があるか?
ベ:落合が来てさ、巨人が優勝したのは何回だ?
Y:一回。
海:いや、落合はそれなりの成績を残したよ。
ベ:残してないよ。ロッテ時代の成績を残してれば三回は優勝してるよ。
海:いや、それはそうだけど清原なんてオソマツなもんじゃない(yomoyomo 爆笑)。
ベ:ちょっと待て。清原が来た年にさ、斎藤、桑田、槙原の三人の勝率ががくっと下がったでしょ? 清原のせいじゃないの。それを清原のせいにするところに巨人ファンの浅ましさがある。
Y:いやいや、それはいいんだけどさ。清原自体は充実した成績残したのか?
ベ:当時は清原が勝利打点は一番多かったんだぜ。清原が打たなかったから負けた試合なんてないの。それよりも、当時育ってなかった投手が打たれて負けた試合ばかりなの。
Y:そうかねえ。
ベ:確かに松井はスターなんだよ。でもな、清原はスーパースターなの!
海:(冷静に)清原もう引退したほうがいいんじゃないの?(yomoyomo 爆笑)マジで。たまにホームラン打つ程度やん。
ベ:じゃあさ、今年の松井のホームランでどれが印象に残ってる?
海:それは・・・余りないけど。
Y:確実に量産する人とたまーに打つ人の違いじゃないのか?
海:松井はまだ守備もできるから。清原よりはいい。
ベ:(大袈裟に)うわっ、松井ゴールデングラブ賞とったっけ? とったっけ? イチローや新庄なら普通のキャッチが、松井の場合は「超」ファインプレーと放送されるんだもんなあ。
海:そりゃあ新庄に比べたら下手だよ。
ベ:いやね、松井は王さん目指せばいいわけ。それなのにあいつは長嶋さんになりたがってるわけ。それが間違ってるわけ。
Y:方向性としてね。
海:でもよ、清原なんてさ、打てないときのコメントって何よ。あのファンをないがしろにしたさ。自分が打ち始めたら調子こきやがって。
ベ:うわっ、お前最近の清原のコメント聞いてないな。でもな、清原がヒーローインタビューでさ、「神様に感謝します」って三回しおらしいコメントを続けて言ったわけ。そしたらファンに何言われたと思う? 「聞き飽きたぁー」って言われるわけよ。
海:でもそれって自分が打ったときのコメントじゃん。それだったらなんぼでも言えるって。人間苦しいときに何が言えるかというのがポイントなの。
ベ:何にも言わずに(フライデーの番長日記にも耐え)巨人の負けの責任を背負ったじゃない。それが嫌だから報知の取材を受けなくなったのだよー。TBS で「ZONE」やるんだよー。
Y:うん、あれはすごかったね。よくできたドキュメンタリーだった。ホームラン打ったのを見て奥さんが泣いているところに、清原の自宅にばんばん FAX が入ってさ、その音で音声が乱れるのがリアルだったよ。
ベ:奥さんべっぴん。
Y:よくあの時期に彼と結婚したもんだ。でも巨人の現役選手があそこまで TBS に撮らせるというのもね。
ベ:あそこまで報知に悪口書かれれば[註1]そうなるよ。
Y:巨人・・・というか読売への決別宣言なのかもね。そういえばさ、この間のオールスター戦でさ、清原打ちもしたけどデッドボール当てられたじゃない。
ベ:どこにオールスターでデッドボール当てられる選手がいる? やはり清原はスーパースターなんだな(誰も突っ込まずしばらく沈黙)。そういえばこないだ話した別冊宝島の本[註2]だけどさ、落合とか山本浩二とか掛布とかがさ、どうやってホームランを打ったかみたいな話があるわけよ。そこで清原はさ一言「しばきあげるんじゃ!」とか言ってるわけ(一同爆笑)。
Y:やっぱ関西弁で「しばきあげる」だよな!
ベ:で、理想のホームランについて他の人は「外角低めの球をこう・・・」みたいに言ってるのだけどさ、清原は「ドカベンの山田太郎が打つ瞬間にボールがべこん、とへこむ感じ」とか言ってるわけ(一同爆笑)。あれは水島新司のマンガだろっての。
Y:いやだからそういう野性的なところが長嶋的とも言えるかもね。そういえばさ、これはたけしが言ってた話だから本当か分からないけどさ、長嶋が現役だった頃は遠征に行くとみんな同じ部屋で寝てたわけね。そんなとき長嶋は深夜に思い立ったように素振りをやるんだって。そのとき寝ている人間の身体をぼんぼん踏みながら歩いて外に出たんだって。でもね、引退間近になるとさ、寝ている人は避けて素振りに行くようになって、それで周りの人間は、ああ長嶋さんも引退なんだな、と思ったらしい。
ベ:だからさ、王さんは清原を取らなかったわけ。そしてあの時代の(そして現在コーチなどをやってる)巨人の選手、中畑や篠塚や水野は清原をけなすんだよ。清原がいた西武に負かされた過去があるから[註3]。
Y:ただ清原をとらなかったのは王さんでなくフロントの判断なんだ。
ベ:あのとき監督が王じゃなく長嶋だったら清原を取ってたと思うよ。
Y:俺はそういう王貞治悪役論というのは根本的に間違っていると思う。
ベ:いや、バカ(ミスター)はバカ(だんじりファイター)を好きなんだよ。
海:でもね、(巨人は桑田でなく)清原を取っていた方が得策だったと思うよ、ホントの話。
ベ:そうすれば原が引退した後に四番を固定できたわけだ。優勝回数も増えていたと思うよ。だってさ、清原はさ床屋に行ってさ、「シチリアンマフィアのようにビシっと」とか言う奴なんだよ。
海:でもさ、もう清原は引退していいよ。
ベ:お前松井派か? (yomoyomo を指して)こいつも言うんだよ。「松井で何がダメなの」って。
海:もう清原トレードに出してほしい。
ベ:松井はさ、身長が185だか186だか言ってるけどさ、ホントは178なんだよ。顔がでかいんだ。本当はそんなにタッパはないはずなんだ。
Y:それって人格攻撃じゃねえか?
ベ:だってお前ピッチャーから見れば遠近法が崩れるわけなんだよ。投げづらいんだよ。
Y:(yomoyomo、ベンジャミンをしばく)お前何滅茶苦茶なこといってんだよ!
ベ:どうして巨人ファンには拗ねた人が多いんだろね。
対談後記:
Y:(↑を見ながら)一番拗ねているのはお前だという気もするが。ベンジャミンさん、編集協力ありがとうございます。ところでウェブ上で巨人・清原関係でオススメのページとかあるかい?
ベ:意外に知られてないのだけどさ、巨人のオフィシャルサイトの中にさ、桑田のサイト(現在はない)があるんだけどさ、その日記がかなり面白い。特に彼にとってはツライ年だったからその記述も結構すごいものがある。
Y:「LIFE OF ART18」ってのは本人のセンスかね。でも確かに面白い。僕の方はやっぱり清原道場(後記:閉鎖したようだ)かな(笑)
ベ:ふん。
[註1] ベンジャミンは、清原や江藤や落合や広沢は、オロナミンCのCMに出してもらえず、全般に巨人軍の外様の扱いがひどい、ということを指摘していたが、実はこれは巨人の伝統である。例えば、ONや柴田、森、土井といった子飼いだけでV9を成し遂げた印象があるが、引退間近のベテランを毎年二三人引っ張り、使い捨てにしてきた過去がある。FAから始まったことではないのだ。
[註2] 宝島社刊「別冊宝島521号プロ野球4番打者」のこと。ベンジャミンによる解説は必ずしもその本の記述を正確に再現したものではないが、面白かったので修正はしなかった。
[註3] ベンジャミンによると、昨年の清原の第1号ホームランに対する中畑のコメントは「どさくさ紛れの一発です」だったそうだ。現役生活自体がどさくさ紛れの奴には言われたくない言葉だ(これは yomoyomo の意見)。コーチの篠塚とも仲が良くなければ居づらかろう。