『Wiki Way』ショートエッセイ(6)
Wiki と2ちゃんねる


 最近 blog 関係の話題が多かったが、久方ぶりに Wiki の話といこう。「Wiki Way」のサブタイトルにもある通り、Wiki が最も力を発揮するのはコラボレーション(共同作業)に利用されるときである。それをコミュニケーションのツールとして使った場合にもそれと同じ力を発揮するかというと難しい、というのは『Wiki Way』へのリアクションでも指摘されていることである。

 その違いは「Wiki Way」においても、「スレッドモード」と「ドキュメントモード」という二つの言葉で表されている。前者が個人の意見、主張が飛び交う議論形式で、後者がテキストをその Wiki コミュニティの共有財とみなす寄稿形式である。

 Wiki ページはスレッドモードで始まる傾向にあるが、いずれはドキュメントモードに収束、整理されるのが好ましいというのだが、これはその Wiki サイトにおいて適切なリーダシップを発揮する人がいないと難しい。「Wiki Way」にも指摘されているが、Wiki を既存の掲示板やニュースグループのように利用してスレッドモードがだらだらと続き、そのトピック(Wiki ページ)に関する「リファクタリング」が適切に行われないとその Wiki ページは見難いものになってしまう。

 もちろん Wiki がコミュニケーションツールとして使えないというわけではなく、例えば一行コメント追加機能により特定の Wiki ページ自体を簡単なやり取りに使うなどの割り切り方もある。

 一方一言で「コラボレーション」といっても、力を貸すにたる「そそるネタ」がないといけない。現在は飽くまで個人サイト作者(Wiki クローン作者も含む)が Wiki を公開する場合が多く、人指向になりがちである。もちろんそれが悪いわけではなく、例えば Gauche、WiLiKi の作者である Shiro Kawai さんによるクロスリファレンス作りへの利用は、Wiki の接続性をうまく使っていてさすがである。とはいえ、早く日本でも本家 Portland Pattern Repository のような「ネタありき」の Wiki サイトができればと思う。

 これに近い位置にあるものとして SourceForge.jp にある Gentoo Linux の Wiki サイトがまず浮かぶが、トップページに「メインページはWikiをやめたい」と書かれていて少し悲しかったりする…と思っていると、joesaisan さんから2ちゃんねるの Debian スレが Wiki をまとめ用に使っていることを教えていただいた。

 僕自身「訳者あとがき」で昨年夏の2ちゃんねる閉鎖騒動のときに同様の Wiki を情報整理に使われる動きがあったことを書いたではないか(なお、本文中にも一箇所2ちゃんねる用語を忍び込ませていたりする…)。2ちゃんねるが現在の日本において最大のネットコミュニティを形成しているのは疑いようがない。ただコラボレーションの場としてあのシステムが最良とはいえないだろう。このことに限らず掲示板システムの不自由なところをものともせずびっくりするような使い方をしているのを見かけて感動することも多いのだが、それはそれ。

 そう思っていたところに八木さんから MorphyWiki という Wiki サイトを作ったことを教えていただいた。はっきりいって MorphyOne そのものは既に破壊的な状態なのだと認識しているが、最近になって機能仕様書が公開されるなどなかなか外野を飽きさせないネタを提供続けてくれている。そろそろクライマックスを迎えるのだろうか…といってもそれが何のクライマックスかよくわからんのだが。

 MorphyWiki の充実ぶりを見て、Wiki を2ちゃんねるの特定トピックのまとめ用に使うというのは、非常にうまい掲示板システムとの共存、棲み分けの仕方であるという思いを強くしました。


[後記]:
 2ちゃんねるのスレッドから生まれた Wiki ページのリンク集ができており、題材の多様さ、何よりその数の多さに驚かされます。


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初出公開: 2002年12月09日、 最終更新日: 2004年01月31日
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