「DVDCA と大きな嘘」訳注


 「DVDCA と大きな嘘」で話題となる暗号関係の問題については以前から興味があったし、今回はこれまで訳出してきた分野と異なる人名・事項が中心となるので、訳注と関連リンク集を作ってみた。訳文の理解の助けになれば幸いである。

 訳注などについて事実誤認などがある場合はご指摘願います。

[訳注1] DVD Copy Control Association(ウェブサイト)が正しいと思うのだが。[本文に戻る]

[訳注2] MoRE (Masters of Reverse Engineering) が開発した、暗号化された DVD ビデオファイル(.VOB ファイル)をコピーし、暗号が解除された状態でハードディスクに保存する、60KB 程度のユーティリティーソフト。[本文に戻る]

[訳注3] 誤解しないでいただきたいのだが、クラックという言葉から無条件に悪いイメージを持たないでいただきたい。クラッキングというのは、アクセス制限の抜け穴さがしを指す表現として一般に使われている。つまり「良性のクラッキング」と表現もありうるのだ。[本文に戻る]

[訳注4] 原文の John Does は、裁判などでの一方の男性名を指す John Doe の複数形だろうが、わざわざ defendant(被告)という単語と別にされたかはよく分からなかった。[本文に戻る]

[訳注5] 被告には、21人の個人の他に、(Slashdot などを含む)DeCSS にリンクをはった72のウェブサイトが入っている。DeCSS にリンクを貼っただけで起訴というのも無茶な話であるが、リンクを貼った有名人にしても Bruce Schneier 氏などは被告に含まれておらず、その人選(サイト選?)は恣意的である。[本文に戻る]

[訳注6] 電子フロンティア財団(EFF、ウェブサイト)。1990年設立。DES 暗号を解読する装置を作り、"Cracking DES"山形浩生氏による日本語訳) という本まで出すなど気骨のあるところを見せている。DVD 暗号問題に関してもアーカイブを設けているので、参照いただきたい。[本文に戻る]

[訳注7] これについては、暗号研究、開発における第一人者である Bruce Bruce Schneier 氏が「DVDの複製防止コード破りは「朗報」だと考える理由」という的確な論考を残しているので参照いただきたい。暗号鍵が40ビットだったからいけなかった(古くなったと言われる DES でも56ビット)、というのが実は正しくないのが分かるだろう。Bruce Bruce Schneier については、氏がトップを勤める Counterpane のサイトにあるバイオグラフィーを参照いただきたい。[本文に戻る]

[訳注8] 詳細なプロフィール、活動内容については本人のサイトを参照していただきたい。Cygnus Solutions や EFF の共同創設者というだけでなく、Sun の初期のメンバーでもあり、現在もフリーソフトに精力的に関わっておられる偉人。[本文に戻る]

[訳注9] 山根信二さんに指摘されて気付いたのだが、この言葉は、一部回線が落ちても、経路情報を更新しながらパケットを通すようなインターネットの自律性になぞらえられている。山根さんのアドバイスに従い、この後の ESR の比喩の訳もこうした思想を踏まえたものに修正した。[本文に戻る]

[訳注10] 詳細については、コンテストのウェブサイトを参照いただきたい。審査員として ESR やハロウィンIVにも出てくる Rick Moen の名前も見られる。[本文に戻る]

[訳注11] 「動物農場」でも知られるジョージ・オーウェル(1903-50)の同名小説が原作。David Bowie のアルバム「Diamond Dogs」はこの小説が元ネタになっているし、Apple が1984年のスーパーボウル放映時に、この作品を下敷きにした名作CM(監督はリドリー・スコット)を流したことは余りにも有名。但し、映画版については訳者は観たことがなく、監督と音楽を担当した Eurythmics が揉めたことしか記憶にない。一応データを書いておくと、監督・脚本がマイケル・ラドフォード、出演はジョン・ハート、リチャード・バートンなど。1984年イギリス。[本文に戻る]

[訳注12] 最新作「ラスベガスをやっつけろ」がようやく日本でも公開されたテリー・ギリアムのハリウッド進出作品(1985年公開)。出演はジョナサン・プライス、ロバート・デ・ニーロ、イアン・ホルム、マイケル・ペイリンなど。デ・ニーロが「消失」してしまう映画史に残るファンタスティックな場面などの印象的な場面を数多く含むカルトSFの名作。脚本はギリアムと「恋に落ちたシェークスピア」でオスカーを受賞したトム・ストッパードが担当。

映画の上映時間と陰鬱なエンディングを巡り、アメリカ、カナダの配給権を持つユニバーサル映画(の社長シド・シャインバーグ)とギリアムが激しく対立した。危うくお蔵入りになるところを、ギリアムが雑誌に全面広告を出したり、地下上映会を開いたりしながら86年度ロサンジェルス映画批評家賞を受賞(最優秀作品賞・監督賞・脚本賞)し、何とかアメリカでの公開にこぎつけたのは有名な話で、ギリアムがハリウッド体制に対して敢然と立ち向かい苦闘するさまは、「バトル・オブ・ブラジル」(ジャック・マシューズ著、柴田元幸訳、ダゲレオ出版)というルポルタージュに詳しい。近未来管理社会を描いた監督が映画内容さながらの闘争劇に巻き込まれたのは何とも皮肉な話である。

前述のいきさつから分かる通り、本作にはヨーロッパなどで放映されたオリジナル版(141分)、ギリアムによって再編集されたアメリカバージョン(132分、単にカットされただけでなく、オリジナル版にない場面もある)、そしてシャインバーグがTV放映向けに強引にハッピーエンドに改竄した別編集版(94分)が存在する。Criterion から発売された DVD 版はギリアム自身の協力も得て、オリジナル版、メイキング・フィルムなどに加え、シャインバーグ版も収録(!)してあるという非常に豪華な内容だそうだ。

申し訳ない、モンティ・パイソン絡みなので思わず熱くなって書きまくってしまった。[本文に戻る]

[訳注13] 通称 CDA。フィラデルフィア連邦地裁において、違憲判決が下った(当然だ)。判決文もウェブで閲覧可能(原文日本語訳)。[本文に戻る]

[訳注14] National Security Agency(米国家安全保障局、ウェブサイト[本文に戻る]

[訳注15] 簡単に言うと、暗号鍵を第三者に信託するシステムのこと。米国ではこの「第三者」の役割を政府が行うことで、政府が暗号化データに確実にアクセスできるようにすることを目指した。すずきひろのぶさんによる「時代遅れなキーエスクロー」に詳しい。「クリッパーチップ計画」のもとになったエスクロウ式暗号規格(1993年に発表)は NSA の設計。[本文に戻る]


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初出公開: 2000年01月14日、 最終更新日: 2002年11月16日
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