Link Free Mystery2


 半年以上前になるが、「Link Free Mystery」という文章を書いた。ウェブページへのリンクは自由であって、そんなこといちいち書くまでもないことだろうにどうしてこれが議論になるのかなあ、というただそれだけの文章なのだが、文章を公開すると早速いろんな方からご意見をいただいたりした。皆いろいろ思うところがあるわけだ。また、他の方のウェブページのリンクを論じた文章に、「Link Free Mystery」を参考文書としてリンクを貼られてあるのを見かけたりもする。今回はその続編である。

 予め書いておくと、ここでいう「リンクフリー」というのは、「リンクはご自由にお貼りください」という意味なのでお間違えのないように。これは和製英語であって、そのまま本場に持っていくと、「リンクがない」もしくは「リンク無料」、ましてや「リンクしてはだめ」という意味になりうる言葉であるということは存じております(でもホントにそうなの?[註1])。


 「Link Free Mystery」を公開した後に読者からいただいた情報の中で一番笑わせてもらったのが、鈴木さんに教えていただいた、北海道大学工学部のサイト内のリンクについての規定を記したページである[註2]

 原則としては認めるそうである(だからリンクを貼らせてもらった)。しかし庶務係に連絡せい、とのことである。この段階で、このサイトを作成した人間が Web について無知であることは明らかなのだが、その連絡先に住所しか書いてない! メールアドレスぐらい指定してくれないかね、普通。当然のごとく電話番号もなし。

 つまり、北海道大学工学部内のページをリンクした当方は、封書(葉書)、もしくは電報といった手段でその旨を伝えなければならない、という解釈でいい・・・というかそういう解釈しかできない。これまでリンク通知を封書などで律儀に行った人間は一体何人いるのだろう。

 三年以上前に書かれたページに難癖をつけてもしょうがないのは分かっている。ただ(理系、文系で区別するのは不毛であるが)文学部や経済学部の人間よりも明らかにコンピュータとネットワークに馴染んでいるはずの工学部でこれだというのは致命的だと思う。これがつまりは北海道大学工学部のレベルなのだろう。


 しかし、その後上の例が鼻くそ程度に思えてくるすさまじく強力なページを知ってしまった。BURGER KING 公式ページの中にある、「法律に関する情報」(http://www.jtnet.ad.jp/WWW/burgerking/law.html) である(注釈:バーガーキングの営業停止に伴い、このページはなくなっている)。

 企業ページにおいても、ここまでリンクに関する制限を豪快にうちだしたところを僕は他に知らない。書面を作成して郵送すると、許可/不許可の裁定(!)が下るのだそうだ。

 彼らの主張について論評はすまい。僕は以後バーガーキングを利用しない、とだけ書いておこう。元々ファストフードなんて余り利用しない人間である。一つぐらい絶対行かない、と決めたぐらいで特に影響はないし、そんな人間が一人決意しようがバーガーキングにしても痛くも痒くもないだろう。あんたらのハンバーガーは食わんよ、ただそれだけの話。


 気分が暗くなったので話題を変える。前回の文章を書いた後で見つけた、リンクに関する意見の中で唯一目を引いたのが、いしなおさんによるアンリンクフリー宣言である。つまりは、「リンクを外すのはご自由に」ということなのだが、考えてみれば、ウェブページを作成する過程で、コンテンツにどうリンクを貼るか、自分のウェブページにどうリンクを貼られるか、ということは誰でもそれなりに意識が働く。しかし、そのリンクを外したくなったとき、のことは余り考えてないものだ。

 誰でも自分が死ぬときのことを考えたくないように、ウェブページとしての寿命を見越してページを作る人間などそうはいない。しかしデッドリンクにならなくても、そのページをリンクする意義がなくなってくることは現実問題よくあることだ。

 善は急げ。いい機会なので、この文章を書くのと同時に、うちのサイトのリンク規定に関する文章にもアンリンクフリー宣言の考えを反映させてもらった。


 しかし、である。「リンクをはずすのは自由」というのも、「リンクするのは自由」というのと同じくらい言わずもがなの当たり前の話ではないだろうか。いしなおさんもこのことは分かっておられるだろうし、問題は飽くまで余計な気兼ねなしにウェブサイトの運営をお互いにやっていくための一つの気配りのあり方なのだと思う。とどのつまり、ウェブページは人間が自分達の時間・労力を割いて作っているものなのだから。

 それに幾らリンクフリーと言ったって、法が許すなら何でもかんでも、というやり方は少なくとも僕はしない。例えば大分前のことであるが、山形浩生氏からある翻訳文書(?)の URL を示して、「リンクとかはまだしないでくださいな」と注記されたメールをいただいたことがある。この時に「いえ、全ては公開性の元に晒すべきものですからリンクします」などとアホなことは言わない。それは相手への礼儀とこちらの信義のあり方の問題だ。

 また一部のニュースサイト・企業サイトは「TOP ページ以外でのリンクを禁止する」みたいな制限を明示的に設けたものもあるが、僕の場合、それが事前に分かっていたら、基本的にはリンクはしない。つまり、日経や朝日のサイトのニュース記事ははじめから参照リンクの対象として考えない、ということである。だが、一々そこのリンク規定を調べてリンクするようなこと普通はしないけどね。


 でもこの「リンクへの制限」の記述とやらにマヌケな事例が多いのは何故だろうね。例えば、「アット・ニフティホームページへのリンクについて」(http://www.nifty.com/policy/link_copy.htm#link) 。二つの制限を設けているが、そのままでは両方とも意味不明だし、文脈を読み取れたとしても、意識的にやってくれる人間なんてそうはいないだろう。

 あと映画「マトリックス」の日本語版オフィシャルサイトのリンクページにある以下の文章も情けない。

「マトリックス」のオフィシャルサイトへのリンクはフリーです。
ただし、必ず下記あてにリンクした旨のメールを送って下さい。
なお、ターゲットは、 http://www.whatisthematrix.com/japan として下さい。

 それは全然フリーじゃあないっての!


 今回の文章は、正直書いていて気が重い。何か他をけなしてばかりだし、最後に書く事例がその止めをさすからだ。

 MAQ?MAK?MAC! 経由で知った Feanor 氏のリンクについての考え(2000年3月6日以降の記述)を読み、僕は頭を抱えた。

 「トップページ以外へのリンクは駄目」とのことである。「ちょっと見れば判るのにちゃんとそういうこと理解せずにリンク張ってる人が多」いのが頭に来るそうで、氏は宣言する。

「リンクは自由だ」とか言ってページ運営者の明示した意図に反するリンク張るような奴は,法やインターネットの理念が許しても,人として駄目です。

 うわおぅ! 人として駄目! そこまで言えますか。憤懣やるかたない氏は、JavaScript を利用してフレーム内のページを単独表示できなくしたそうだ。全くご苦労様な話である。僕は JavaScript は基本的にオフにしている(ついでに書くなら Java も)ので何の関係もないのだが、それはどうでもよろしい。


 でもどうしてこの人はトップページ以外へのリンクを拒絶するのか。この人のページがフレームを使っているからで、フレーム内のページからはどこへも行きようがないからだそうである。でもこれって理由になるか? 各ページの一番上か下にでもトップページ、インデックスページへのリンクを入れればいいだけの話じゃない。少なくとも JavaScript のソースを書いて、動作をチェックするよりは数倍そっちの方が安全だし、楽だと思うけど。自作のプラグインにクレジットもなしに直接リンクを貼られたのはひどい話だとは思う。確かに僕のリンクについての考えには、バイナリに直接リンクを貼られる場合の視点が欠けている。しかし、それをサイト全体に適用するというのは幾らなんでも乱暴なのではないだろうか。

 第一この人は他のサイトからのリンクを何だと思っているのだろう。僕のサイトを例にして考えてみる。この週末、中村正三郎氏が僕が訳した「FUD とは何ぞや?」をリンクしてくださったが、飽くまでそのリンクは FUD についての翻訳文書を参照するためのものであり、それ以上でも以下でもない。勿論、それを足がかりに当サイトの他のコンテンツを辿る人もいるだろうが、それは閲覧者が決めることだ。

 ましてやフレームを使っているから他のページに飛べない、などという事情はリンクを貼る側(この場合中村さん)がどうこう言える問題ではないし、それは飽くまで貼られる側(この場合僕)のページ作りの配慮の仕方の問題である。別に僕が何の配慮をしてなくったって本当は構いやしない。読者はブラウザの「戻る」ボタンを押し、元のコンテンツに戻っていくだけの話ではないか。

 別にこれは他のサイトからのリンクに限った話ではない。ロボット型のサーチエンジンからの閲覧を考えれば、より分かりやすいと思う。

 つまり、この人は他サイトから自サイトのどのコンテンツへのリンクでも、そこからは閲覧者が自分のページを動き回る、と考えていることになる。これってちょっとあつかましくはありませんか? ましてやトップページなどへのリンクを各ページに入れるといった配慮も何もなしに、リンク貼る人に「人として駄目」といった威嚇的な言葉が書ける見識を僕はまず疑う。「気遣い」とか「相手への敬意」なんて美しい言葉を使う一方で、自分のポリシーに合わない行為に安直に「強姦」といった言葉を使う程度の言語感覚の人なのだから仕方ないのだろうけど。


 理念や法とやらが、運営者の希望よりも無条件に優先するような論調が許せない、という考えは上に書いた僕の考えとも近いとは思う。人間がやることなのだから。でも、なぜそういった理念ができあがってきたのか考えてみると、それはその理念を守ることで、それなりに多数の人間の利益になる(少なくとも守れば不利益にはならない)からこそではないだろうか。

 しかし、その理念は時として利用者にとって抑圧的に感じられるときもあるだろう。そうしたときのみ啖呵が切れるのだと僕は思う。この場合は、幾らなんでもそのハードルが低いような気がするのだが(これは所謂「権利」についての話と近いと思う。権利には実態なんかはなく、それを想定することで利益があるから権利があるものとするのだ。しかし、今の世の中のように誰も彼も身勝手に権利ばかりを主張すると碌でもないことになるということ)。つまり明示すればそれが認められると考えられるのがまず浅はか。

 ところで「ちょっと見れば判る」そうなのだけど、氏のサイトのどこにリンク規定があるのかね?[註3] 折角フレームを使って三分割しているのだから、そのどちらかにでも書いておけば一目瞭然だろうに、特に記述はない。それなら、と「About This Site」ページを見てもやはり記述がない。どういうことなのだろう、とトップページを下にずーーっとスクロールして一番下にようやくそれらしき記述を見つけることができた。

このページはリンクフリーです。
ただし,必ずトップページに張って下さい。

 ・・・やはりこの人の立場に立って考えることはできやしない。理念や法をどうこう言いながら、「リンクフリー」という言葉一つまともに使えないのだもの。

 まずそこらへんから改善してみてはいかがだろう。つまり、「リンクを貼りたければ必ずトップページにしろ。これを読んで他のページに貼ろうとする人間は人道に反する」とでもね。

 これなら誰も間違えないと思う。しかしそれを「リンクフリー」とは言わないと思うよ。


[註1] サカジュンさんから教えていただいた、「辞書学メーリングリスト」での議論をみると、「link free」という表現も、link を名詞でなく動詞ととらえるなら可能ではないか、という意見が出ている。同様の主張は以前 fj にも流れていた。ただ "Seriously, the origin of link free is Japanese-style English." と書いているページもあったりする。うーむ、難しい。

[註2] 2000年5月25日に北大工学部のページがリニューアルされ、リンク規定のページはなくなった。よって北大工学部のリンク規定に関する記述は歴史的な意味合いしかないことをご理解いただきたい。

[註3] 現在では「About This Page」に明快なリンク規定がのってある。また、最後に取り上げたリンクに関する記述も変わっているので、ここも歴史的な意味合いしかない。詳しくは先方のサイトを見て確かめてください。


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初出公開: 2000年03月13日、 最終更新日: 2002年07月31日
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